#300 10万円の行方

 政府は30万円支給で迷走した挙句に国民全員に突如一律10万円支給を決定し、その支給方法を先日公表しましたが、この10万円支給に対して国会議員の間で様々な対応があるようです。本日「東洋経済 ON LINE」で面白い記事を見つけましたので転載します。前回のブログで書いた国会議員の歳費が詳しく書かれています。

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『歳費2割減で露わになった政治家の独善と欺瞞』
ー批判逃れの茶番劇に国民の批判が高まるー

 国民生活がコロナショックで窮迫する中、国会議員の歳費2割削減や一律10万円の受け取り辞退の動きに、各界各層から厳しい目が注がれている。
各党は、国から受け取る歳費を2割削減することで基本合意した。国民全員に一律で配られる10万円についても、受け取り辞退やいったん受け取った後に寄付などをする動きが出ている。
 ただ、こうした国会議員の対応には「国を動かす政治家の独善と欺瞞が際立つばかり」(有識者)との嘆きが広がっている。

<維新と共産は歳費削減に反発>
 多くの国会議員は「自ら身を切ることで、国民に寄り添う」(自民党幹部)と胸を張り、4月30日と見込まれる2020年度補正予算案の成立に合わせて、各党は最終的な対応を打ち出す方針だ。
 ただ、2割削減には「5割削減が当たり前」などの批判が相次ぎ、10万円の扱いについても各党の対応はバラバラ。国民の政治不信を加速させかねない状況だ。
各党の協議が先行したのは議員歳費の削減だった。緊急事態宣言の全国への拡大や全国民への一律10万円給付の決定に先立ち、4月14日の自民、立憲民主国対委員長会談で「2割削減」で合意した。これを受けて自民党は20日の臨時総務会でこの方針を了承。同党が国会議員歳費法改正案を議員立法で提出し、月内にも衆参本会議で成立させる段取りを決めた。
 国会がコロナショック対応に揺れる中、歳費削減で合意した自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳の両国対委員長は、「国会も国民の皆さんと気持ちを一緒にするのが非常に大事」(森山氏)、「我々自身が範を示す」(安住氏)と胸を張った。
だが、これに対し、3月に2割削減を求めていた日本維新の会は「風向きが変わって態度が一変した」と反発。政党助成金の受け取りを拒否している共産党は「筋が違う。今は国民の命と健康、生活と営業を支え、全力で補償する方策を仕上げるのが国会議員の仕事」と安易な歳費削減合意を批判した。
 国会議員の給料に当たる議員歳費については、月額129万4000円と規定されている。2割減額なら同103万5200円となり、25万8800円の削減だ。適用は5月分から1年間とされ、年額では議員1人当たり310万5600円の削減となる。
 これだけ見れば表向きは「範を示した」ようにもみえる。しかし、国会議員は歳費のほかに、文書通信交通滞在費などの名目で各種手当を歳費とほぼ同額受け取っており、これに各党(共産党を除く)に交付される政党助成金や都内一等地の議員会館・宿舎の家賃の優遇などを合わせれば、議員1人当たりにかかっている「コスト」は年額1億円超との推計もある。
 このため、厳しく計算すれば「削減の実態はわずか3%程度という微々たるもの」(政界関係者)となる。こうした実情を知る橋下徹元大阪市長は「せめて5割削減と言えないのか。国会議員は結局、自分の財布が大事」などと批判。永田町でも「批判逃れの茶番劇」「国会議員のモラル低下の表れ」などの自嘲めいた声が広がる。

<大臣は10万円の受け取りを辞退>
 一律10万円給付に対する大臣や国会議員の対応も問われている。政府は21日の持ち回り閣議で、大臣と副大臣、政務官を対象に10万円の受け取り辞退を申し合わせた。安倍晋三首相が20日の自民党役員会で、「10万円については、全閣僚が受け取りを辞退する」との判断を示したことを受けたものだ。これに伴い、自民党も所属国会議員の受け取り辞退を決定する方針だ。
 公明党の山口那津男代表は「私自身は受け取らない」と語ったが、党としての受け取りの可否は決めない考えを示すなど、与党内でも対応が分かれている。
野党側では、立憲民主党の安住国対委員長が国会議員の受け取りの可否について慎重に検討する考えを示し、国民民主党は総務会で党所属国会議員が受け取った10万円を寄付などで社会還元する方向となった。維新の松井一郎代表も、党所属国会議員と地方議員が受け取ったうえで、党が全額を徴収し、寄付に回す方針を明らかにした。
 一方で、共産党の小池晃書記局長は会見で「私はもらわない」としつつ、「受け取るか受け取らないかを聞くこと自体をやめたほうがいい。もらわない選択肢もあるし、もらって全部寄付する人もいる。それぞれが判断すればいい」と党としての方針は決めない考えを示した。
 各党の対応はバラバラとなるが、その背景には、各政党やそれぞれの所属国会議員1人ひとりの台所事情の違いがある。「国会議員だから、として画一的に対応するのはおかしい」との指摘もあるが、「多額の税金で待遇が保証されている国会議員は、10万円どころかさらに身銭を切るのが当たり前」という庶民感覚とのズレは隠せない。
 国会には、自民党の河井克行前法相と河井案里参院議員夫妻のように公選法違反疑惑で雲隠れを続ける議員や、緊急事態宣言下で「セクシーキャバクラ」通いが発覚し、立憲民主党を除籍処分となった高井崇志衆院議員など、「かなりの数の不良議員」(政界関係者)が存在する。

<消える「井戸塀政治家」>
 これらの議員は、政治家としての活動は「ほとんどしていない」(同)とみられるだけに、インターネット上でも「こんな議員の歳費や手当に血税が使われるのは許せない」との声があふれる。
 多くのメディアは、政治家による歳費2割削減や10万円の受け取り辞退などについて、分析や解説記事をあまり伝えていない。大手紙幹部は「コロナ報道に埋没し、議員の格好つけにすぎないので、優先順位が低かった」と釈明する。
 しかし、コロナ対策の成否は「首相や閣僚だけでなく、個々の国会議員の政治判断にもかかっている」(自民長老)のは事実だ。それだけに、「国会議員の自覚不足が、コロナ対応での国民の不信感を広げている」(同)ことは否定できない。
国会議員はかつて「選良」と呼ばれていた。また、一昔前には「井戸塀政治家」という政界用語もあった。前者は「選ばれたすぐれた人物。特に、国会議員をさす」(三省堂大辞林)とされ、後者は「国事に奔走して家財を失い、残るは井戸と塀ばかり」という、清貧を旨とする政治家像を指す言葉だった。
 しかし、「いまや政界では、選良や井戸塀、清貧というような言葉は死語となった」(有力政治学者)のが実態だ。安倍首相はコロナ禍を「第3次世界大戦」と表現したとされるが、今回の議員歳費や10万円給付をめぐる対応をみる限り、「国民や前線兵士を放置して、大本営発表を続けた帝国日本の軍部の姿が二重写しになる」(同)と指摘されても仕方がない。
(https://toyokeizai.net/articles/-/346210?page=3)
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 確かに幕末、明治、大正時代には多くの傑出した偉大な大政治家が国家社会のために身を捧げたものです。現代の政治家にとって「井戸塀」に相当する政治家が何人いるでしょうか。国家危急存亡の時に果たして何人の政治家が立ち上がってこの国を導くことができるでしょうか。挙党一致することなく、与党も野党も口先ばかりの論戦をおこなっています。心中は誰も自分の歳費を減らしたくないのです。政治家を見れば国の将来が分かります。非常に嘆かわしいことです。

2020年04月23日