#274 無言の帰国

 昨日故中村哲医師のご家族がご遺体に悲しみの対面をなさいました。空港には棺を担ぐ大統領の姿も見え、国を代表してご遺族に追悼の言葉をかけていました。本日の午後にご遺体は日本に戻る予定となっています。読売新聞から次の記事を紹介します。
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中村さんのひつぎ、先頭で担いだ大統領「全てのアフガン人が勇敢な男と記憶する」
 アフガニスタン東部で殺害された民間活動団体(NGO)「ペシャワール会」現地代表で医師の中村哲さん(73)の遺体は7日、妻の尚子さん(66)と長女・秋子さん(39)らとともに、アフガンから帰国の途についた。
 出国に先立ち、アフガン政府が首都カブールの空港で見送りのセレモニーを開いた。アフガン国旗に覆われた中村さんのひつぎをガニ大統領が先頭に立って担ぎ、飛行機に向けて運んだ。ガニ氏はあいさつで、井戸や農業用水路の整備に取り組み復興に尽力した功績をたたえ、「全てのアフガン人は、彼をアフガンの勇敢な男として記憶する」と述べた。
 尚子さんらは6日、大統領府でガニ氏と面会した。秋子さんは「(父に)良くしていただいて、ありがとうございました」と述べ、アフガンの人々へ謝意を示したという。
 ペシャワール会によると、中村さんの遺体は9日に出身地・福岡に着き、11日に告別式が行われる。
(https://www.yomiuri.co.jp/national/20191207-OYT1T50249/)
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 また西日本新聞によりますと、中村哲さんに日本政府と地元当局は事前に「危険」を伝達していたそうです。

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アフガニスタン東部で福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師中村哲さん(73)が殺害された事件で、日本の外務省が中村さんに対し、危険が迫っているとして注意を呼び掛けていたことが7日、分かった。地元当局は約1年前から危険情報をつかみ、事件直前に中村さんに襲撃計画の情報を伝えていた。中村さんも警戒態勢を強めていたものの、犯行グループが用意周到に襲撃を実行した可能性が高まっている。
 複数の政府関係者によると、外務省は直接、中村さんに対して危険が迫っている旨の情報を伝えていたという。外務省幹部は「中村さんとは接触して『危ないです』と伝えていた。(事件に遭ったのは)非常に残念だ」と話した。
 一方、事件が起きたナンガルハル州の当局者は、約1年前に情報機関から中村さんの身に危険が迫っているとの情報が州当局に伝えられ、内務省がボディーガードを派遣して護衛に当たらせていたという。同州のメヤヘイル知事は、情報機関からは約1カ月前にも注意喚起があり、事件前日の3日に中村さん本人に襲撃の恐れがあると伝えた、としている。
 中村さんは4日、同州ジャララバードで、車で移動中に武装した男らに襲われた。銃撃した武装集団は6、7人で、車2台を使ったとの情報があり、地元警察が当時の状況を調べている。
(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/566300/)
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 中村医師はそれに怯むこともなく自分の夢をアフガンの土地に咲かせ続けたのでしょう。彼の意志は永遠にアフガンの地に残るでしょうが、只々残念の一言です。
 国内だけでなく、海外からも中村医師の死を悼む声が多く届いています。このブログでは現地の人々の声をいくつかご紹介します。(出典:「パンドラの憂鬱」)

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■ ナカムラ医師が用水路を作ってくれたおかげで、
  アフガンの砂漠に緑が誕生したんだ。
  他にも様々な施設を作ってくれた。
  地獄を天国に変える術を知っている、偉大な男だった。
 
■ 彼ほどアフガンのために動いてくれた人はいなかったね。

■ 日本の皆さん、ナカムラ医師を守れなくてごめんなさい。
  全てのアフガニスタン人が悲嘆に暮れています。

■ 最近はクナール川の水を地元の人たちが利用出来るように、
  灌漑工事をやってくれようとしてたんだよね。
  本当に犯人が憎くて仕方がない。

■ 祖国を愛するアフガニスタン人の中で、
  彼の命を奪おうと思う人間なんているはずがない……。
  これはアフガンの混乱を求める人間の犯行に違いない。

■ ナカムラ医師はアフガンに緑をもたらし、
  政府の人間はアフガンに荒廃をもたらした。

■ 日本国民とナカムラ医師のご家族に謝罪したい気持ちでいっぱいだ。
  彼の安全のためにもっと警備を強化するべきだったんだ。

■ アフガニスタンのサムライが旅立ってしまった。
  怒りと悲しみで本当にやりきれないよ。

■ 彼はアフガニスタンに天国を作ってくれたんだ。
  彼の御霊が還る場所もまた、天国に違いない……。 

■ 世界の片隅を灯し続けた人生だった。
  そして全てをアフガンに捧げてくれたんだ。
  ああっ、なんて偉大な人なんだろうか。

■ ナカムラ医師がアフガンに遺してくれたものは数多くある。
  難しい地域に平和な暮らしを与えてくれた事もその1つ!

■ アフガン人なら今まで彼が何をしてきたのかみんな知ってるはず。
  それなのに守れなかったことは痛恨の極みだ。

■ ナカムラ医師は砂漠に楽園を作り出してくれた。
  ただただ地元の人たちの幸福を願って……。
(http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3280.html)
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 上記のサイトでは中村医師に捧げる言葉がまだまだ続きます。中村医師が緑地化したアフガンの写真も掲載されていますので、興味のある方はサイトをご覧ください。
 さらに
 中村医師だけでなく世界の片隅で活躍されている名も知らない日本人がたくさんいます。使命感からそのような活動をされているのでしょうが、彼らの上に安全と幸福がありますように、心から祈ります。

2019年12月08日