#598 大蛇山祭り
盛夏の候、日本各地で夏祭りや花火大会が開催されています。各地方の祭りにはその由来や伝統が染み込み、親から子へ、子から孫へ伝わり、一つの文化が伝承されていきます。ここ大牟田も夏祭りと言えば大蛇山祭りで、今週末26日、27日に以前繁華街だった本町通りで大蛇山が賑やかに練り歩きます。
さて、この大蛇山ですが、元は中国の福建省のジャオドリに起源が由来するようです。それが長崎くんちのジャオドリ、筑後地方の大蛇山につながったようです。この大蛇信仰ですが、蛇なのか龍なのか意見が分かれるところですが、中国の福建省では蛇信仰だったようです。「長崎のジャオドリ」と「筑後の大蛇山」について原尻英樹という方が一冊の本にまとめていますので、今日は彼の本から引用したいと思います。
----------
『長崎のジャオドリと筑後の大蛇山』(原尻英樹)海鳥社
日本の一般市民にとっては古来より蛇信仰が継続しており、福建省の龍踊りには抵抗がなかったようだ。長崎の諏訪神社には旧来から蛇信仰があったので、福建省のジャオドリは受け入れやすかった。これが長崎のジャオドリのはじまりである。
筑後の大蛇山は三池、渡瀬、江浦、中島,崩道(くえど)、南関の各地に大蛇山の伝統がある。大蛇山には三池山信仰が関わっている。三池山は標高388メートル、大牟田市内で一番高い山である。三池山の頂上付近にある三池宮の裏には3つの池があり、三池山は雨乞いの山でもあった。
蛇をご神体とする神社は日本各地にあり、琉球や東シナ海に面した地域に尊大している。現在大蛇山は大牟田市、柳川市、みやま市、熊本県玉名郡南関町と旧柳川藩・三池藩の祇園の祭りとして行われている。
大蛇山というと、今では大牟田市の祭りだと思われているが、元来の大蛇山は次の四か所で、古くからの水神信仰と祇園信仰が結びつき、それぞれの特色をもって開催されていた。その四か所とは、三池(大牟田市)、渡瀬、江浦(以上みやま市)、中島(柳川市)で、三池の大蛇山には旧柳川藩(三池本町)と旧三池藩(三池新町)の2つがある。大牟田市の大蛇山が一般的になったのは昭和になってからで、先の四か所が老舗の大蛇山である。
----------
ちなみに大蛇山は毎年新しく作られます。ただし設計図はなく、すべて過去の記憶を頼りに作られます。27日の大蛇山フィナーレでは本町通にすべての山車が集合し、口から火を噴き(実際は花火です)、勇壮な姿を見せます。この口から火を噴く姿に怪獣の姿が重なり、怪獣ゴジラの原形を見る気がします(笑)。
炭鉱の閉山とともに大牟田市は人口が半減し、繁華街はシャッター街と化しましたが、大蛇山祭りの日だけは昔日の賑わいをみせ、大正町通りは多くの見物人で立錐の余地もありません。市民は年に一度の祭りを楽しみに待っています。大蛇山について詳しく知りたい方は次のHPにアクセスしてください。
https://www.omuta-daijayama.com/
追記:
『福岡・大牟田の化学工場で有毒ガス漏れたか 20人超搬送 祭り中止に』
27日午後6時10分ごろ、福岡県大牟田市橋口町で、通行人の男性から「硫黄のような臭いがする」と110番があった。県警や大牟田市消防本部によると、付近の三井化学大牟田工場から、有毒の可能性があるガスが漏れたという。付近の住民や工場の従業員など20人以上が「気分が悪い」と体調不良を訴え救急搬送された。重症者はいないとみられる。この影響で、付近で開催されていた大牟田市の夏の風物詩「おおむた大蛇山まつり」が中止になった。
(毎日新聞 2025/7/27 21:28(最終更新 7/27 23:00))
----------
祭り関係者には午後7時過ぎにガス漏れの連絡がありました。以降のイベントが急遽中止となり、祭り全体の中止が決まったそうです。大蛇山は来年に期待しましょう!