#521 繁殖引退犬

 多くの家庭でイヌやネコなどのペットが飼われていますが、実際ペットは家族の一員として扱われています。またペットショップに行けば様々な種類のペットがおり、かわいらしい姿を見せています。ところが私たちの目に見えないところで生きている動物がいます。ペットを産む親の存在です。本日のブログは繁殖犬を取り上げたいと思います。
 繁殖犬とはペットの子犬を産む親犬のことです。2019年に改正された動物愛護管理法では生出産回数は6回まで、交配時の年齢は6歳までと定められられました。しかし、繁殖を引退した犬(繁殖引退犬)の存在を知る人は少ないと思います。NHKクローズアップ現代では先日この問題を取り上げていましたので、その一部をご紹介します。
----------
『さまよう繁殖引退犬 ペット業界の“異変”を追う』
 「繁殖引退犬」という言葉をご存じだろうか?ペットショップに子犬を供給するためにブリーダーが飼育してきた犬で、いま大量に手放されています。劣悪な環境で飼育してきた悪質業者の排除などを目的に2019年に動物愛護管理法が改正。犬の飼育頭数や出産できる年齢などに制限が。その結果、経営危機に直面し繁殖引退犬を手放すブリーダーが続出。犬を預かるシェルターもあふれ、山林に捨てられるケースまで…。異変の深層に迫りました。
<さまよう繁殖引退犬 ペット業界に異変!?>
桑子 真帆キャスター:
私たちが犬や猫を飼う時、多くの人がペットショップから購入します。犬や猫は、ブリーダーが繁殖させています。ブリーダーのもとには子犬だけではなく、その親である繁殖犬、そして繁殖の役割を終えた繁殖引退犬もいます。
 この繁殖引退犬は、法律で原則、最期まで飼育する"終生飼養"が求められていますが、手放すしかない事態に追い込まれるブリーダーが増えているんです。なぜなのか。取材を進めると、ペットを巡って異変が起きていることが見えてきました。
<動物愛護管理法 なぜ改正されたのか>
桑子 真帆キャスター:
きょうのゲストは、獣医師で動物の福祉・愛護に携わってきた佐伯潤さんです。なぜ、こうした事態になっているのかということで、VTRにもありましたが、2019年に改正された動物愛護管理法を受けて、繁殖犬の数、それから出産回数、年齢に制限が設けられました。このあとにさまざまな問題が噴出しているわけですが、そもそもなぜこうした数値規制の改正が行われたのでしょうか。
佐伯さん(獣医師・帝京科学大学 教授):
 大体2000年ぐらいを境に、今までは犬であれば番犬として外に飼っていた、猫は出入り自由で過ごしてたわけですが、そういった飼い方から、屋内で飼い主さんと一緒に過ごす犬や猫が増えてきた。
また、15歳未満の子どもの数よりもペットの数が多くなってきたという背景がありまして、ペットは家族の一員であるという意識が広がっていったんです。
 ただ、その一方で繁殖業者の中には悪質な環境で繁殖犬を飼育して子どもをどんどん産ますという、いわゆる「パピーミル(子犬工場)」というような問題もたくさん出てきたり、それから経営が行き詰まって「多頭飼育崩壊」を起こすような問題というのも認められるようになってきました。
 そんな中で規制となったのですが、今後、やはりこの規制がどうだったかということについては検証していく必要性はあると思います。
<ペットを守るには何が? アニマルウエルフェアとは>
桑子 真帆キャスター:
 獣医師などの専門家が入り、環境を改善していくという取り組みご覧いただきましたが、こういった取り組みをどう評価されていますか。
佐伯さん:
 とてもすばらしい取り組みだと思います。ペット業界の川上の部分でしっかり専門家が入っていくことは大切だと思います。ペット業界の特徴としまして、バブル期やペットブームを通じて古い体質のまま大きくなって拡大してしまった。
桑子:
 古い体質というのは?
佐伯さん:
 古くからの犬屋さんというような雰囲気ですね。あと閉鎖的な部分もありましたので、それが昨今、問題になりましたけれども、業者さんが帝王切開をしてしまうというような問題につながる体質だと思います。
桑子:
 獣医師ではなく、ということですね。
佐伯さん:
 そうですね。ですので、今後はVTRにありましたように専門家、獣医師をはじめとした専門家が関わっていくことで新しい知識や技術というのを入れて改善していく必要性があると思います。
 そういったことがうまくいった事例として、身近なものとしては動物園の展示動物があると思います。非常に飼育環境が悪いところもあって大きな問題になっていたのですが、専門知識のある獣医師などが関与することによって、飼育環境や動物の取り扱いがかなり改善されてきています。
 最近、動物園に行かれた方は感じられたと思うのですが、実際に本来、動物が暮らしていたような飼育環境を再現していたりとか、自然界で動物がとっていた行動が発現できるような、行えるような物を置いたりという、さまざまな動物福祉の視点に立った改善が行われています。今後、このようなことがペット業界のほうにも適用されれば、もっといい飼育環境になるのではないかなと思っています。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4870/#p4870_08
----------
 クローズアップは30分番組のために上記以外の内容が多く含まれます。番組全体の内容を知りたい方は上記のアドレスをクリックしてください。
 ペット業界花盛りの裏で不都合なことが多々起こっています。これも人間の飽くなき欲望ゆえの悲劇です。生き物の命を利用して金儲けをする人間の愚かさの一端と思えます。人の命も動物の命も同じ命です。人間だけが自然の頂点に立っているわけではありません。様々な命の共存の上で、人間の命も存在します。例えばミツバチがいなくなれば、花の受粉ができず、それを一因として食物連鎖が崩壊します。このように自然は微妙なバランスを取りながら地球上のすべての生命を養っています。それを人間の欲望のために破壊してはならないのです。人間の我欲ゆえに現在この星は苦しんでいます。私たちが自然の恵みに感謝しなければ、自然は地震や津波、火山の噴火など自然災害を用いて地上から人間をふるい落としかかるでしょう。私たちの周りにいる小さき生き物を通して真摯に全ての命に向かい合いたいものです。

2024年02月11日