#210 サっちゃんが行ってしまった

 ♪サっちゃん (作詞阪田寛夫、作曲:大中恩)
  サッちゃんはね サチコっていうんだ ほんとはね
  だけど ちっちゃいから 自分のこと サッちゃんって呼ぶんだよ
  おかしいな サッちゃん

  サッちゃんはね バナナが大好き ほんとだよ
  だけど ちっちゃいから バナナを 半分しか 食べられないの
  かわいそうね サッちゃん

  サッちゃんがね 遠くへ行っちゃうって ほんとかな
 だけど ちっちゃいから ぼくのこと 忘れてしまうだろ
  寂しいな サッちゃん

 先日「サっちゃん」を作曲した大中 恩(おおなか めぐみ)さんが死去されました。大中さんは他にも「犬のおまわりさん」などの名曲を残されています。この有名な2曲は今でも多くの幼い子どもたちによって歌い継がれています。この歌についてウィキペディアに次のような説明がなされています。

【サっちゃん】(https://ja.wikipedia.org/wiki/サッちゃん)
「1959年10月10日に開催されたNHKラジオ「うたのおばさん」放送開始10周年記念リサイタル(主催:松田トシ)にて、新曲として発表された。作詞の阪田寛夫は、この歌は「近所に住んでいた少女サッちゃんのことを歌っている」と語っており、サッちゃんのモデルとなった少女は、阿川佐和子であるとされている。阪田寛夫と、佐和子の父・阿川弘之とが知り合いで、互いの自宅も近かったためで、このことは週刊文春で阿川が連載していた対談「この人に会いたい」の中で阿川が阪田と対談した際に判明した。しかし、2011年3月18日放送のTBS系『ぴったんこカン・カン』に阿川が出演した際には、「『実は阿川は関係無く、幼馴染の少し影のある少女が幼稚園を転園したときの思い出を書いた曲』と言われた」と発言している。」

 幼い頃に聞いたり歌ったりした唄はいつまでも心に残るものです。特に童謡・唱歌として親から聞いた子守歌や童謡・唱歌は日本語の美しい語感や音楽のメロディやリズムの素晴らしい感性に基づいた一流の作者による作詞・作曲が行われており、明治時代に作られた歌も時代を超えて生き続けています。この「サっちゃん」もその中の1つでしょう。
 その一翼を担ってきたのが毎日放送されているNHKの歌番組「みんなのうた」だと思います。5分程度の短い放送でありながら、この番組を通して様々な童謡・唱歌が流され、多くの日本人の心の中に音楽の感性を醸成させてきました。この歌番組は「NHK全国学校音楽コンクールと」併せて音楽という媒介を通してNHKの社会貢献のひとつだと思います。
 ところがNHKの最近の傾向として、「みんなのうた」に登場する多くの歌は童謡唱歌のような叙情豊かな歌ではなく、誰に向けて歌っているのか訳のわからない歌ばかり流されています。NHKは民放と異なり公共放送です。極端な偏りのある番組や報道は自ら慎む姿勢を持っているはずです。ところがこの「みんなのうた」は以前と異なり、情緒不安定な歌ばかり流しています。一体誰がどのような基準で選曲しているか、大いに疑問です。
 話題は変わりますが、今年の「平成最後の紅白歌合戦」も同様の傾向が見られます。従来はあらゆる世代を考慮した歌手を出場させていましたが、最近の傾向として特定の世代(特に若い世代)受けを狙った番組作りが見受けられます。これでは公共放送ではなく、民放で放送されているただの歌番組と同じです。その年のヒット曲だけでなく、世代を超えて歌われている歌を多く採用すべきです。そうしないと今まで歌い継がれてきた数々の名曲が失われていきます。人々が口にしなくなった瞬間から歌は消えていきます。換言すれば、時代の波を超えて生き残ったものが名曲となるのです。その意味でNHKは子どもたちが観る歌番組に取り上げる曲の選定に十分すぎるほど気遣っていただきたいものです。

2018年12月09日