#184 ミスター笑点逝く

 この1週間は大きな出来事が立て続けに起こった週になりました。サッカーワールドカップにおける日本チームの活躍、日本国中広範囲にわたる豪雨被害、元台風による北海道の豪雨被害、オウム真理教の幹部7人への死刑実施など良いニュースや悪いニュースが混在した1週間だったように思えます。いずれもこのブログでひと言述べたい出来事ばかりですが、特に豪雨による被害は凄まじく、今日現在で死亡者、行方不明者合わせてすでに100名以上になっています。被害に遭われた方々に心より御見舞い申し上げます。大地震と同様に水害も発生後の片付けが大変です。特に床上浸水に見舞われた家の建て替えや、避難生活など金銭問題を含め、解決すべき問題が山積します。被災者に対し国や地方自治体の速やかな支援が必要です。
 さて、もう一つ大きな出来事がありました。「ミスター笑点」と言われる落語家、桂歌丸さんの逝去です。歌丸さんの残した功績は大きく、人気長寿番組「笑点」の顔として50年以上も活躍されました。また笑点を通じて落語をより身近な存在として国内外の多くの方に紹介し、落語を歌舞伎や文楽と同じような古典芸能の域まで深めた先達の一人だと思います。
 落語を大衆芸能と捉える人が多いのですが、落語で語られる世界は実に奥が深く、小噺の中に多くの教訓や至言、人生訓が含まれています。一例として多くの人がご存知の「寿限無」という落語があります。「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ・・・」で始まる落語です。冒頭は誰でも口ずさむことができる有名な一節ですが、五劫の擦り切れの意味を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
 「劫」は時間の長さを表わす言葉ですが、どのくらいの長さでしょうか。一説によりますと、十里四方の大きな岩があり、その岩の上に3千年に1度天女が天から舞い降りて、羽衣の裾でその岩を触ります。するとほんの少し岩がすり減るそうです。それを繰り返し、すっかり岩がすり減って無くなるのが「劫」という時間の単位だそうです。それを5回繰り返すほど長生きしてもらいたい、という親の願いが「劫」という言葉に含まれています。「寿限無」は多くのめでたい言葉をつなぎ合わせて生まれた子どもの名前にする落語ですが、出てくる言葉の一つひとつに奥深い内容があります。ぜひ文字で読んでいただきたい落語の一つです。なお古典落語を分かりやすくまとめたものが講談社や角川文庫から出版されていますので、手軽に購入できます。
 桂歌丸さんは無くなる直前まで寄席やテレビなどで落語を語っていた仕事一筋の方でした。「自分から落語を取ったら何も残らない。」「楽になりたいので今苦労しているんだ。楽になるときは、目を閉じたときだ。」などの名言を残しました。後世に名を遺す名落語家のお一人です。今頃は故円楽師匠と笑点の思い出話を語り合っていらっしゃることでしょう。

2018年07月08日