#381 一億総玉砕!?

 5月末になってようやく本来の5月らしい天気が戻ってきました。例年ですと、6月の第1週に入梅するのですが、今年の天気は異例です。異例と言えば、今年開催される予定の東京オリンピックも異例の展開を迎えています。
 オリンピック開催まで残り2か月となりましたが、本当に開催できるのでしょうか?この時期になり様々な業界から開催に対して異論が出されてきました。これもひとえに政府が明確な指標を出さないからでしょう。菅政権は現時点であくまでも開催する方向で調整しているようですが、このコロナ禍では多くの懸念が伝えられています。来月末に緊急事態宣言が取り消された後で、はたして大きなリバウンドが発生しないか誰も分かりません。人命とオリンピックどちらが大切かは明らかです。IOCの無謀な要求に応えてオリンピックを開催した場合、もし感染者が急増したら内閣総辞職では済みません。国民の命と引き換えにオリンピックを開催した汚名が永遠に残るのです。
 それを避けるために政府は具体的な開催スケジュールを明示すべきでしょう。コロナ禍の状況を考慮していつの時点でオリンピック開催か中止かを宣言しなければなりません。そうしないと、いつまでも医療従事者を中心に多大な迷惑をかけることになります。医療従事者はオリンピック開催期間中に数百人単位でオリンピックに従事することになります。日本医師会の談話によりますと、現状ではオリンピックに従事できる医療関係者の数が不足しており、各地域の医療体制もひっ迫している状態です。
 また、様々な業界からも異論が続出しています。昨日次のような記事がネットに掲載されました。
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『東京五輪に慎重論 経済界で浮上、緊急宣言影響も警戒』
 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長ら著名経営者が今年夏の東京五輪・パラリンピック開催に懸念の声を上げた。緊急事態宣言が延長されることを受け、開催反対の世論が高まる恐れがあり、現時点で静観する多くの企業でも戸惑いが広がっている。
 五輪開催について孫氏は23日、ワクチン接種が遅れている日本で「(感染で)失われる命や、緊急事態宣言した場合の補助金、GDP(国内総生産)の下落、国民の我慢を考えるともっと大きな物を失うと思う」とツイッターで表明した。
 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長も今月中旬放映の米CNN番組で「リスクが大き過ぎる」と主張。五輪スポンサー企業では朝日新聞社が26日付朝刊に「中止を決断するよう菅(義偉)首相に求める」との社説を掲載した。
 一方、政府系金融機関の支援が決まった居酒屋大手ワタミの渡辺美樹会長は28日の記者会見で、「やめるべきだとは思うが、(菅首相が)突き進むならば支持したい」と語った。有力スポンサー、NTTの澤田純社長は12日の決算会見で「私自身は、オリンピックは開くべきだと考えている」と強調し、安全な開催への議論を呼び掛けた。
 JTBは開幕まであと2カ月に迫り、観戦チケット付きツアーの販売再開に踏み切った。別の旅行業界関係者は「開催ありきではないが、準備を進めないと間に合わない」と頭を抱える。
 緊急宣言延長で行動への制約が続き、国民のストレスは募る一方だ。はけ口のようにインターネット上で選手らの言動に不満を示す動きも見られる。トヨタ自動車の長田准執行役員は12日の決算説明会で、安全な開催に期待しつつ「(選手への批判は)スポンサーとして大変心を痛めている」と語った。
(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021052800899&g=eco&utm_source=
top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit)
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 また最近のIOC委員からの日本に対する威圧的な意見にも批判の声が挙がっています。
「新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、開催の是非が問われている東京五輪。そうした中、IOC(国際オリンピック委員会)の最古参委員、ディック・パウンド氏(79)が、「週刊文春」の単独インタビューに応じ、「菅首相が中止を求めても、大会は開催される」などと述べた。」(https://www.msn.com/ja-jp/news/national)
 一民間団体が国家より上位だと考えること自体が間違っています。以前よりIOCには様々な疑惑があり、IOC委員の中には開催希望国からの賄賂をもらって逮捕される事件も生じています。いわゆる「オリンピック貴族」が存在するのです。1週間ほど前に次のような記事が開催されました。
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『IOC幹部の特権 1泊300万円の宿に4万円で宿泊、差額は組織委が負担』
 新型コロナウイルスの感染拡大が収束しないなか、国民からは中止や延期を求める声も多く出ている東京五輪。しかし、何が何でも「開催ありき」で突き進むのが、一部の政治家や“五輪貴族”たちだ。日本政府は、入国する五輪関係者に対して「14日間の隔離」を免除するなど“入国特権”を与えているが、五輪関係者の特権はまだまだある。
 来日する各国選手は選手村と競技会場を行き来するだけの「バブル方式」が適用され、事実上の“軟禁状態”に置かれる見通しだ。一方でバッハ会長をはじめIOC(国際オリンピック委員会)や各競技団体の幹部は5つ星ホテルでの“貴族生活”が約束されている。
 東京都は大会期間中に「The Okura Tokyo」「ANAインターコンチネンタル」「ザ・プリンス パークタワー東京」「グランドハイアット東京」の4ホテルの全室を貸し切り、IOC関係者に提供することを保証している(「立候補ファイル」より)。
「The Okura Tokyo」には、国内最高額とされる1泊300万円のスイート(720平米)があるが、IOC側の負担額の上限はどんな部屋でも1泊400ドル(約4万4000円)までと定められ、差額は組織委が負担する。
 さらに今年4月28日に開かれた政府と組織委、東京都の五輪コロナ対策調整会議で、感染防止のために大会関係者と選手の移動は「新幹線一両貸し切り」「航空機はチャーター」などと決められた。バッハ会長が「ぼったくり男爵」(米国ワシントン・ポスト紙)と報じられるはずである。
 日本の組織委幹部の待遇も破格だ。東京五輪は開催しても中止しても大きな赤字が出ることが予想され、最終的には税金で穴埋めすることになるが、常勤役員報酬の最高額は月額200万円で、別に交通費、通勤費、旅費(宿泊費含む)、手数料等の経費が支給されると定められている。経費の見直しが行なわれても役員報酬は減らされていない。
 どれだけ感染拡大してもIOCや組織委側が「中止」を言い出さないわけである。
(週刊ポスト2021年5月28日号)
(https://www.news-postseven.com/archives/20210522_1659932.html?DETAIL)
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 近代オリンピックの創設者クーベルタンがこのことを知ったらどう思うでしょうか。彼はすぐにもオリンピックを無くしてしまうでしょう。オリンピックはあくまでも平和の採点です。平和の象徴として開催すべきだとと思います。その中にはコロナ禍で練習もままならぬ世界中の選手たちに平等に練習する機会を与えることも意味します。それができない現状では本当のオリンピックの価値はありません。練習環境に不公平があるからです。
 この先オリンピック開催がどのような状況になるのか、私たち国民は注視していく必要があります。そうしないとかつての太平洋戦争のように「一億総玉砕」となりかねません。戦争で命を落としても、疫病で命を落としても、同じ命です。政府は国民の命を預かる立場として真摯に考えてもらいたいものです。

2021年05月30日