#318 日本社会5つの予言

 今年のお盆は新型コロナの影響で帰省客が例年の1/3ほどになっているそうです。確かにニュースで新幹線やJRなどで帰省する場面が映りましても、空席が目立っています。羽田空港のロビーも例年のような混雑状態が見られません。新コロは私たちの健康面だけでなく経済にも大きな打撃を与えています。このような状況下で、今日面白い記事を見つけましたので転載します。かなり長い記事になりますが、どうぞ最後までお読みください。

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『コロナで様変わりする日本社会「5つの予言」、秋以降は他人事ではない』
<コロナ禍によって、今何が、なぜ起きているのか>
 新型コロナに関する政府の対応について、「意図がよくわからない」という意見をよく耳にするようになりました。その典型が、コロナ禍でのお盆の帰省問題です。行政の対応が分かれて、東京都知事が「帰省はお控えいただきたい」と意見する一方で、安倍総理は記者からの質問に対して、国民のお盆の帰省自粛は特に求めませんでした。
 国民一人ひとりが判断せざるを得ず、結果として今年のお盆は帰省を自粛する人が多い一方で、例年のだいたい3分の1の人が帰省するといった状況で、国民の判断が分かれています。行政が自粛判断を差し控える中で、新型コロナは徐々に全国に広まりつつあります。そこで、政府の対応がとても無策に感じるという人が多いのです。
 なぜ、行政がこのようなちぐはぐな対応をしているのでしょうか。このことも含めて、コロナ禍によって、今何が、なぜ起きているのか、そしてこれから何が起きるのかを、我々は知っておく必要があります。私の近著『日本経済予言の書』をはじめ、これまでお伝えしてきた未来予測の話をもとに、お話ししたいと思います。
 これから年末にかけて日本の政治・経済面で起きることは、以下の「5つの予言」でまとめることができそうです。

【予言1】大半の人にとってコロナショックは、生死のリスク以上に経済のリスクが大きい。
【予言2】日本政府は国民に「外に出ろ」と言い、国民は「出たくない」と言うようになる。
【予言3】夏のコロナの死者数は有意に少ないが、11月から2月にかけて死者数は急増する。
【予言4】コロナの経済被害は、とりわけ特定業種に集中する。
【予言5】コロナによる構造改革で、企業の業績はむしろ向上するケースが出てくる。
この順序で、今起きていることとこれから起きることを解説していきたいと思います。

【予言1】大半の人にとってコロナショックは、生死のリスク以上に経済のリスクが大きい
 この予言について、まずは大前提となる数字ですが、これまでの新型コロナの死者数は1060人(8月12日時点)です。後で述べるように、この死者数は今年の冬にはさらに増加するリスクが高いのですが、少なくとも今のところはこの程度の被害で収まっています。
 これはたくさんの方々の献身的な努力の賜物ですが、冷静に捉えるとこの数字は、猛暑だった2018年の熱中症の死者数(1581人)よりも小さいのです。同様に交通事故死は3000人となっており、インフルエンザは推定値ではありますが、年間1万人が関連死しているという数字があります。
 「人命は何よりも尊い」と言いますが、だからといって「車は売るべきではない」「インフルエンザの流行中はリモートワークを」とは誰も言わない。これは自動車事故にしても熱中症にしてもインフルエンザにしても、それらのリスクと共生しなければいけないことを前提に、社会が回っているからです。
 新型コロナの問題は実はここにあって、新しい災厄であるがゆえに、例外的にこうした「割り切り」が、まだ世界全体でできていないのです。そのため行政は、責任を取りたくない気持ちが強く、新型コロナを一番リスクが高い指定伝染病に設定して、医療現場や社会への負担を高めてしまっています。
 本来、政治が取り組まなければいけないことは、新型コロナのリスクを社会の中でどのレベルに設定するかということなのですが、現政権はそこを巧みに議論せずに避けています。そのことにより、大半の国民は新型コロナによって、生死にかかわるリスクよりも経済的なリスクによる打撃を強く被っているわけです。これは多くの国民にとって、すでに起きていることです。

【予言2】日本政府は国民に「外に出ろ」と言い、国民は「出たくない」と言うようになる
 この予言は、私が5月9日に記事に記したものです。新型コロナが生死以上に経済へのリスクが大きいことがわかると、政府は(5月25日の)緊急事態宣言解除後は、手のひらを返したように国民に「外に出てお金を使ってくれ」と言うようになるだろうという、当時の予測です。
 この予言は、その通りに的中しました。「Go Toキャンペーン」の迷走から、冒頭で触れたコロナ帰省を自粛させないことまで、今の政府の対応をぴたりと言い当てています。
 そもそもGo Toキャンペーンの後に沖縄では感染爆発が起き、県の人口当たりの新規感染者数は東京の2.5倍に達し、現場では病床が不足するなど医療崩壊も起きています。それでも政府は国の問題としては捉えず、東京以外の道府県から沖縄への旅行客に対して半額補填を継続しています。
 なぜ政府は、このようなおかしなことをしているのでしょう。理由は2つあります。1つは、7月に起きた第二波ともいうべき再流行では重症化患者や死者が目に見えて少ないこと。そしてもう1つは、観光業界が壊滅的な打撃を受けている中で、国民の目が外に向いている今のビジネスチャンスは、10月で終わることがわかっているからです。
 国民からの批判を考えると、【予言1】で指摘したように、「重症患者が少ない新型コロナは、この夏においては生死の問題よりも経済問題として取り扱う」ということを、政府は口が裂けても言えません。しかし、やっている政策を見れば、コロナ問題をそのように扱っていることは明白です。そして国会を開かず、議論の余地をなくして現在の政策を続ける最大の理由は、次の【予言3】で述べるように、「おそらく秋になると、この状況が急変するから」です。

【予言3】夏のコロナの死者数は有意に少ないが、11月から2月にかけて死者数は急増する
 これは医学ではなく統計学的な分析からの予測です。今、世界のコロナの死者数が一番多いのはアメリカの16万人で、それに次ぐ第2位がブラジルの10万人となっています。ところがブラジルは、今年の4月までは新型コロナの死者数が非常に少なかったことが知られています。
 実際、4月15日時点で人口100万人あたりの死者数を比較すると、当時コロナが最も猛威をふるっていたイタリアでは350人でしたが、ブラジルは7人でした。当時ブラジルの死者が少なかった理由は、南半球のブラジルが夏だったからだと考えられています。
 しかし5月に入ると(日本の11月に相当)ブラジルでは100万人あたりの死者数が37人と増加し始め、8月(日本の2月に相当)には480人に到達し、世界第2位の死者数を出す段階まで来てしまったのです。
 あくまで医学的な根拠ではなく、統計分析からの推論ではありますが、今日本で重症化する新型コロナ感染者が少ない理由は、「ブラジルでも夏は少なかったのと同じ現象」といえる可能性があります。猛暑が長引けば、日本人にとって良い状況は10月くらいまで続くかもしれません。
 そうなると日本にとっての問題は、11月以降です。感染者数を比較すると、8月は4月のピークよりも1.5倍くらいに増加していて、政府の対策的にもその数字が減らない構造(つまり、外出自粛などを強制していない)となっています。秋までは、このような状況が広がっていくことが予想されます。
 そしてブラジルと同じように、日本でも秋に入り重症化率が高まるとしたらどうでしょう。今年の5月までの流行では1000人程度で収まった死者数が、この冬の流行では医療崩壊が起きなかったとしても、人口100万人あたり3ケタ、つまり1万人超に到達するリスクが控えているのです。
 そうなると、再度の緊急事態宣言は避けられない。だからこそ政府は今、感染者数が増加していても、重症者が少なく病床に余裕があるという理由から、感染増をあえて問題視しない姿勢を見せているのです。

【予言4】ロナの経済被害は、とりわけ特定業種に集中する
 さて、ブラジルが10万人、アメリカが16万人といってもそれらの国々の人口を考えれば、無事に生きている人の数の方がはるかに大きい。もしも日本でそこまで感染が広まったとしても、やはり新型コロナの最大のリスクが経済災害であることには変わりはありません。
 自宅に籠ることが増えた消費者の買い控え現象から、現在の経済災害が始まっているのですが、秋口にもっとはっきりしてくるのが、耐久消費財や出費の大きなサービスに対する買い控えです。特に被害が大きいのは、自動車でしょう。
 その理由は、新型コロナで打撃を受ける自動車、耐久消費財、旅行、住宅といった業界は、すべて経済学で言うところの「所得弾力性」が高い業界だからです。不況で国民の収入が減ると、真っ先に節約されて売り上げが減る。これを「短期の所得弾力性が高い」というのですが、中でもとりわけこの数値が高いのが自動車です。実際、リーマンショック時にはトヨタ自動車の売り上げは5.8兆円も減少しました。
ヨタはそれでも何とか持ちこたえるでしょうが、問題になるのは地方の旅館やホテル、家具店や工務店といった業種です。これらの業種は中小資本が多いため、経営が傾くと破綻に至るケースが多くなる。そしてそれが、地方銀行などの中小金融機関の経営を直撃します。新たな金融ショックが生まれる可能性も含めて、この冬の日本経済はまったく安心できないのです。

【予言5】コロナによる構造改革で、企業の業績はむしろ向上するケースが出てくる
 さて最後に、一見良いことに思えるものの、よく考えると背筋が寒くなるようなコロナの変化について予言しておきます。【予言4】で触れた苦しい業界とは逆に、新型コロナの影響で業績がむしろ良くなるといった企業も続出するのではないかといわれています。
 これは、インフラ企業や生活必需品を扱う企業など、新型コロナで売り上げがそれほど減らない業種にその効果が集中する現象です。そうした企業がコロナ対応でリモートワークを余儀なくされているうちに、体質がスリム化して、構造改革が進む例が増えているのです。
 新型コロナがもたらした新しい日常では、それまで当たり前と思ってきた仕事の慣行が実は必要ないことがわかってきました。社内でも取引先でも、仕事上の根回しや儀礼的な行動を重んじる文化が薄れ、会議や直接訪問がなくなっています。
 職場では残業や出張が減るわけですが、その結果、当然のように人件費や旅費交通費といった経費も減っていきます。そして企業は、それらのメリットを実感するようになれば、従来ほどの数の社員が要らないことがわかるのです。
 つまり企業は、新型コロナのお陰で不要な人を切ることができる。生き残りのための経営改革を断行するという、大義名分が手に入るからです。

<生活の根幹が崩れるリスクも「自分事」として対処せよ>
 企業にとって一番重要なことは、どのように経営前提が変わったとしても利益を生み出し続けることです。そうでなければ、資本主義社会では投資が起きず、経済も発展しません。よって、本質的にはすべての企業が利益を出すことに向けて、一斉に行動をとる。新型コロナで日本全体の経済需要が冷え込む中、体質のスリム化によるコスト減が対策として一番効果が高いのです。
 日本のあらゆる企業が、リモートワークとそれによるデジタルトランスフォーメーションの効果を実感する中で、人を雇う需要が減っていけば、行きつく先は「失業大国日本」という現実です。そんな怖い話が、見え隠れし始めたのです。
 さて、最後にひとこと申し上げておきます。予言というものは、「このままいけば高い確率でそうなりそうなこと」です。ですからここで取り上げた予言については、それを回避する道もあるはずです。これまで起きてきたことを理解するだけでなく、それをどうすれば変えられるのか――。われわれ一人ひとりが「自分事」として、考えていかなくてはいけないのです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
(https://diamond.jp/articles/-/245385)
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 新コロは日本だけでなく世界中の国々に大きな影響を与え続けています。特に航空産業では多大な被害が出ています。上記の5つの予言は果たして当たるでしょうか。今後の推移を注視していく必要がありそうです。

2020年08月14日