#336 黄金色の命綱

 12月も早中旬を迎えました。師走の月、学校の先生方は学期末の成績処理や保護者面談の資料作成に追われています。昨今は成績処理や資料作成にデーターベース化された資料を作成するのに短時間で処理できますが、ひと昔はすべて手作業で作成していましたので、生徒の成績処理に多くの時間が費やされました。
 最近は生徒数の減少に伴い、1クラスの人数が少ないので保護者面談にかかる時間はそれほどでもありませんが、第2次ベビーブームの1990年前後には1クラス50人前後の生徒がいて、3日間で面談を済ませるために1時から7時過ぎまで休まず面談を行ったものです。とにかく学期末は教師にとり殺人的な忙しい時期になります。
 さて、前回のブログでは「はやぶさ2」のカプセルの無事帰還をたたえる記事を紹介しましたが、本日はアメリカの火星探査機にかかせない日本の企業が制作した「命綱」を紹介します。おそらくこの技術は「はやぶさ2」のカプセルがオーストラリアの砂漠に着陸した際にも使用されたものと思われます。
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『火星への探査機着陸で起きる「死の7分」、成否を握る80本の「黄金色の命綱」は日本発』
 米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「パーシビアランス」が来年2月、火星に着陸する。火星の大気圏に猛スピードで突入し、急減速して着陸するまでわずか7分。「死の7分」とも言われるこの過酷な時間を乗り切るカギは、日本発の「強靱(きょうじん)な繊維」が握っている。

■着陸パラシュートのロープ…帝人「テクノーラ」
火星の大気は薄く、大気圧は地球の0・6%。そんな中、突入4分後に開く直径21メートルのパラシュートは、わずか2分間で時速1500キロ・メートルから同320キロ・メートルに急減速させる。重量約1トンの探査機と傘をつなぐ80本のロープには、大きな負荷がかかる。切断されれば探査機は地上に激突し、ミッション終了だ。
 「命綱」ともいえるこのロープは、繊維大手「帝人」の「テクノーラ」で作られている。強度は鉄の8倍もあり、繰り返し引っ張ってもびくともしない。
NASAの委託でパラシュートを開発した米企業が、その高い能力に目を付けた。事前の試験で、80本で37トンの重みに耐え、期待通りの強さを見せつけた。

■理想の条件求め16年
 同社がテクノーラを発売したのは1987年。「それから30年以上たって、世界的なプロジェクトに採用されたことが感慨深い。先輩たちも喜んでいると思う」
 そう話すのは、帝人のアラミド繊維技術開発課長の山口順久さん(44)。「ただ、強度を上げるのは本当に大変だったようで、開発には16年の月日を要した」
 テクノーラは「パラ系アラミド」と呼ばれる繊維の一つ。リングのような化学構造が繰り返しつながる特殊な細長い分子が、何本も束になっている。それぞれの分子が「平行」に整列すると、引っ張り方向の強度が格段に高まるという。
 平行に近づけるには、繊維を引っ張って伸ばすのが有効だが、そのタイミングや力の加減、温度などの条件がずれると、理想の繊維に仕上がらない。
初期の試作品は、分子の向きがバラバラで、強度も弱く、安定しなかった。膨大な条件を一つずつ検証し、十数年を経てようやくたどりついたのが「350度~550度で8~12倍の長さまで引っ張る」という結論だった。

 最も苦労したこの工程を経ると、繊維は美しい黄金色に変わるのだという。「きれいな色ですよね」。テクノーラを抱え、山口さんはそう語った。
(https://www.yomiuri.co.jp/science/20201210-OYT1T50146/)
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 宇宙開発には多大の費用がかかるだけでなく、あらゆる分野において宇宙環境に耐えうる材料やロケットの開発など、科学技術の粋を集めた体制が必要になります。その中で日本の技術が用いられるのは素晴らしいことです。日本の宇宙開発の優れた技術は糸川博士のペンシルロケットに始まる60年以上の歴史の結晶です。地球環境を守るために今後も月面を始めとする宇宙開発が続けられることでしょう。日本の技術がさらに貢献できるように期待したいものです。

2020年12月13日