#458 ニーバーの祈り

ラインホールド・ニーバー "The Serenity Prayer"
「ニーバーの祈り」

神よ
変えることのできるものについて
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを
識別する知恵を与えたまえ。

「ニーバーの祈り」は、アメリカの神学者であり牧師でもあったラインホールド・ニーバーが、1943年の夏、マサチューセッツ州西部の小さな教会で説教したときにした祈りの言葉だと言われています。しかし、この祈りの作者は18世紀の神学者フリードリッヒ・クリストーフ・エーディンガーだという説や14世紀の一兵士の祈りであったという説、古代アラビアから伝わってきた祈りだという説もあります。また、上の英文とは異なる祈りや、付加された祈りがあるものなどがあり、実際にはその作者はわかっていません。しかし、どのような文にせよ、神の知恵を知り、心の静けさと幸福を得る祈りとして、参考になると思います。
(https://hannah5.exblog.jp/2633255/)
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 上記の「ニーバーの祈り」は様々な所で引用される言葉です。昨日は期末試験の問題を作成しながらNHKのEテレを見ていました。午後2時から「心の時代」の再放送があり、女性漫画家の高浜寛(かん)さんの特集でした。彼女のマンガは日本よりも海外、特にフランスでとても人気があり、「ニュクスの角灯(ランタン)」は2018年に第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞、2019年にリーヴル・パリ(フランス語版)レコメンド作品、2020年に第24回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、秀作として知られているそうです。
 番組の中で高浜氏は連載中の2016年に熊本地震に被災したこと、アルコール依存症と闘病してきたことなどを語り、その中で「ニーバーの祈り」を引用していました。彼女は、「他人は変えられない。変えられるのは自分です。」と意味深に語っていました。彼女艱難苦難の人生をふり返って口から出た珠玉の言葉として、心に響きました。
 ちなみに、この「ニーバーの祈り」は福岡雙葉学園の理事長であったシスター金森が年頭の挨拶や学園の研修会等で、引用されたことを覚えています。世の中には自分の力では変えることのできない多くの事柄があります。特に対人的な問題には、相手を非難したり、自分の主張を押し付けたりしがちですが、それでは人間関係がうまく行きません。そういう時には一度立ち止まって、無理やり相手を変えようとするのではなく、自分を変えることによって物事が前に進むことがあります。
 すべての争いの根源は相手の気持ちを考えず、自分の意思を押し通そうとする偏狭な精神にあります。個人の争いもしかり、国家間の紛争もしかりです。相手が何を望んでいるかを冷静に考え判断し、お互いの一致点を見出す努力が必要となります。それが世の中を平和に導く有効な手段となります。世の中がギスギスしている今、「ニーバーの祈り」は、まさに必要な祈りであり、賢明な思考です。

2022年11月20日