#171 生きていくあなたへ(2)

 ここ数日間各地で真夏のような天気が続いています。昨日は30度を超えた場所が多くあったそうです。ここ大牟田でも最高気温が26度ほどでしたが、空気が乾燥していますので、木陰に入ると涼しく、爽やかな気分になります。
 さて本日も日野原先生の「生きていくあなたへ」から抜粋したいと思います。

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Q:離婚を経験し、もうこんな思いはしたくなくて、新たな出会いを求められずにいます。
A:どんな出会いにも、いつか必ず別れの時が来ます。
 僕も妻も長く夫婦でいましたが、結局死によって分かれる時が来ました。人はいつか必ず別れなくてはいけない。どれほどつらくても、曲げようもない事実であり、受け入れなくてはいけません。
 出会いは感動を伴うけれども、その幸福感が大きければ大きいほど、別れの時に覚える喪失感も大きいものですね。でも生きることと死ぬことの片方だけを選べないように、出会いと別れというものも、どちらか一方だけをとるというわけにはいかないのです。出会いと別れというのは1つのものなのです。
 出会いに感動しながらも、この感動の正体はどこにあるのだろうと、さらにむずむずしてしまう、そんな経験があなたにありませんか。出会いがもたらしてくれる感動の本質が何であるのかということは、その人と一緒にいる間には、すぐにわからないものなのだと僕は感じます。別れなければ、出会ったことの意味、本当の喜びを知ることはできません。
 別れというものはすでに出会いの中に含まれているものだとすると、別れたくないからもう新たに出会いたくないという人もいるかもしれませんね。でも人は生まれてきた時から、他人と出会わずに生きていくことはできないのです。
 愛する人と別れ、こんなつらい思いをするならいっそう出会わなければ楽だったのではないか、という気持ちになる日もあると思います。あるいは、たくさんの別れに心が疲れ、新たな出会いを避けたり恐れたりする気持ちになることもあるでしょう。人間とは弱いものです。
 別れというものは本当に悲しいものですね。それでも別れるべきその日が来たならば、ただ悲しさを感じて終わりにするのではなく、別れが教えてくれる「出会いの意味」に目を向けてみてほしいのです。別れとは、出会いの中にあり、悲しく静かに僕たちが出会った本当の意味を再確認させてくれるものだからです。たくさんの別れを経て、感動の正体を探し続けた今、僕は改めてそう感じているのです。
 『星の王子さま』にこんな別れのシーンがあります。王子さまが、自分の星に大切な薔薇(ばら)を置いてきてしまったことを後悔し、「絆(きずな)を結んだ人と交わした約束には永遠の責任があるんだ」と言って帰っていくとき、王子さまは地球で出会った、大切な真の友である飛行士にこう告げます。
 「悲しみはいつか和らぐよ。いつかその悲しい気持ちが和らいだら、僕と出会ってよかったって思うよ」
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 日野原先生が仰る通り、出会いと別れは表裏一体をなすものです。これは人の出会いだけではなく、ペットとの出会いや、書物など物との出会いも含まれます。大切にしていた指輪や本を失くしてしまうことも1つの別れでしょう。身近な人や物や健康などは自分の周りに存在する間は、その大切さが分かりませんが、失って初めてその価値に気づくものです。

2018年04月22日