#241 嘘つきは泥棒の始まり!

 ここ数日は快晴の状態が続いていますが、異常高温注意報が出されており、午後3時現在、北海道の佐呂間では38度を超える猛暑を記録しました。全国でみると、926の観測地点中53地点で猛暑日となっており。このうちの44地点が北海道だそうです。気象庁は、北海道から近畿にかけての多くの道府県に高温注意情報を発表し、猛暑日が予想される所もあるとして、熱中症に警戒を呼びかけています。全国的に真夏並みの猛暑が続いていますので、充分水分を補給するなど健康管理には充分注意したいものです。
 さて、世の中はオレオレ詐欺などの「特殊詐欺」の犯罪に溢れています。タイで行っていた特殊詐欺の一団が逮捕され、日本に移送されたニュースが先日放送されていました。この詐欺集団を含め、特殊詐欺の背後に暴力団が関わっていると報じられています。暴力団排除条例等により運営資金確保が難しくなり、様々な詐欺事件に暴力団が関わっているのでしょうか。詐欺事件には充分注意したいものです。
 ところで2か月以上前のことになりますが、3月某日のニュース特番で「フェイクニュース」の特集をやっていました。この特番をご存じない方もいらっしゃると思いますので、かなりの長文になりますが、その関連記事を下記に引用します。

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『数千万稼ぐ者も…「フェイクニュース製造村」で見た驚きの現実』
(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55222)
 世界を覆うフェイクニュースの洪水。その発信源のひとつは、なんと東欧の小さな村だった。NHKのディレクター・佐野広記氏が「フェイクニュース村」に潜入し、見たものとは――。

<フェイクニュースでベンツを買った>
 「あ、またフェイクニュースよ」ニューヨークに住む1児の母、アビーさんは、ため息交じりにつぶやいた。いまアメリカでは、市民が日常的に触れる情報の中に、ウソの記事=フェイクニュースが当たり前に飛び交っている。この日アビーさんが見ていたのは、『歯磨き粉のチューブ』に関する一本の記事。『印刷されている読取コードの色が、実は、有害物質の含有量を示している』というデタラメな内容だった。
 「もう何を信じていいか分からなくなってきています」事実が歪められ、ネット上で一瞬にして広がる「フェイクニュース」。今年3月に放送した「放送記念日特集 フェイクニュースとどう向き合うか~“事実”をめぐる闘い~」(NHK総合。NHKオンデマンドで配信中)を制作するにあたり、私たちはその実態を取材した。
 日本でも、『記録的な寒波で、ナイアガラの滝が完全凍結した』とか『大量の塩水を一気に飲めば、腸内をきれいにできる』といった生活情報や健康情報などのウソが出回っている。東南アジアは深刻で、去年『物乞いや妊婦などのフリをした人が、子どもを誘拐しようとしている』というフェイクニュースを信じた人々が、ホームレスを集団で暴行し殺害する事件まで発生していた。
 こうした記事には、広告が埋め込まれており、多くの人がアクセスして広告がクリックされると、発信者に収入が入る仕組みとなっている。ニュースメディア「バズフィード」が発信元を追跡調査した結果、100を越えるフェイクニュースサイトが、ヨーロッパのとある町で運営されていることが明らかになった。バルカン半島にあるマケドニア共和国の地方都市、ヴェレスだ。ニューヨークから飛行機を乗り継ぐこと20時間。「フェイクニュース工場」の異名を持つヴェレスに、今年2月、取材に入った。200~300人の若者がフェイクニュース作りに手を染め、多額の広告収入を手にしていると言われている。
 平均月収約5万円の、決して豊かではないこの町。道行く車の多くは、凹みやキズが修理されずに放置されたまま。バンパーが外れている車も珍しくない。そんな中、BMWやベンツなど、ピカピカの高級車が、2年前から突如増え始めた。しかも乗り回しているのは20代の若者ばかりだという。マケドニアの高級車ディーラーが教えてくれた。「業績はうなぎ登りです。貧しいマケドニアで、若者たちが高級車を買ってくれるなんて思ってもみなかった。彼らはインターネットを使ってお金を儲けているようです」

<すべてがウソばかりになってしまった>
 2年前にフェイクニュースを作り始めた2人組に出会った。金色のピアスが耳に光る、イマドキで端正な顔立ちの男子大学生だった。取材場所に指定されたのは、5つ星ホテルの一室。大学で経営学を学ぶ2人は、先輩から「ネットで記事を書くと金になるぞ」と聞いたのを機に、始めたという。
 当初は、『トランプ候補が「メキシコ国境に壁を作る」と発言した』など、大手メディアでも話題になっていた内容をまとめた記事を作っていたが、どうもアクセス数が芳しくない。そこで方針を変えて、『「ネバダ州の砂漠に強制収容所を作る」と発言した』という具合に、トランプ候補の発言にウソを入れて過激にしてみたところ、アクセス数が急増。広告収入が一気に増えた。当初は「本当」も混ぜていたが、気づくとタイトルから記事、写真まで、すべてウソばかりになっていったという。
 「一番のヒット作だ」という1本の記事をスマホで見せてきた。『速報 ドナルドトランプが心臓発作で死亡』。トランプ氏が仰向けに倒れ、血のようなものが流れている写真が添えられており、画像加工ソフトも駆使して作り上げたという。ホームページ作成方法は独学で学び、英語も使いこなし、アメリカ国民向けにウソの記事を書き続ける2人は、「とにかくタイトルで興味を引くことが重要」と繰り返す。
 作成した記事は、フェイスブックのシェア機能を使って投稿するが、より多くの人に拡散するよう、時差を考慮してアメリカ時間に合わせて投稿するなど、細かい工夫を重ねている。こうしたフェイクニュースで、多い時には月に約60万円(この町では1年分の収入)の広告収入を得ているという。

<フェイクニュースを交換するバー>
 「実際にはありえないような内容を書いているのに、たくさんのお金が入る。アメリカ人って馬鹿だなと思うようになったよ。2020年のアメリカ大統領選挙でも稼がせてもらうよ」と淡々と話す2人に、「罪悪感はないのか?」と問いただすと、「悪いのはフェイクニュースを作っている俺たちじゃない。読んで騙される彼らの方だ」と言い放った。
 2人は、稼いだ金で毎晩のように飲み歩いている。決まって飲むのは、ジャック・ダニエル。マケドニアにも、ワインや蒸留酒のラキアなど国産酒はたくさんあるが、外国の高いウィスキーを飲むのがステータスだという。店はフェイクニュース制作者が情報交換する場になっていて、大勢の若者で賑わっている。
内臓が揺さぶられるほど大音量のクラブ音楽が流れる店内で、彼らは叫ぶように将来の夢を語り合っていた。
 「このままマケドニアにいても、タクシードライバーになるか、レストランのウェイターになるしか道はない。早くマケドニアを出て、自分の会社を興して、未来をつかみたい」2人は空が白むまで踊り明かしていた。
 彼らがフェイクニュースを作る背景には、同国の厳しい経済状況がある。マケドニアが旧ユーゴスラビアの一部だった昔、ヴェレスは国営の工場が集まる一大工業地帯で、活気に溢れていた。ところが、ユーゴスラビアが解体すると、工場は次々と閉鎖。現在、住民のおよそ3割は失業者だ。若者たち口を揃える。
 「親には頼れない、金は自分で稼がなくてはいけない」町の市場を訪ねると、特産のパプリカ、トマト、チーズなど新鮮な食材が並ぶが、お世辞にも賑わっているとは言えない。店主の大人たちは茶を飲み、ヒマそうにおしゃべりする中、忙しく動き回っているのが子ども達だ。6~7歳の少年たちが、外国人の私たちを見つけ「お金をくれ」と言ってきた。
 現地コーディネーターが硬貨を配ったのだが、驚いたのはそのすぐ後。少年の1人がポケットを裏返し、「ほら、僕はまだもらっていないよ。お金をちょうだい」と、ウソをついて、金をさらにせびってきたのだ。フェイクニュースの原点を見た気がした。

<息子にはもっとフェイクニュースを書いてほしい>
 取材では、マケドニアの若者たちの間で「先生」と呼ばれている人物に面会した。ミルコ・チェセルコスキ氏。彼の名刺には「トランプ大統領の誕生を手伝った男」と書かれている。ミルコ氏は7年前から、ネット上で広告収入を得るノウハウを教えており、これまで大勢のヴェレスの若者を指導してきたと言う。
若者たちに必ず紹介するという、1本のフェイクニュースを見せてきた。見覚えのある記事―アメリカで出回っていた、あの『歯磨き粉のチューブ』のニセ記事だった。
 「この1本だけで、1000万円稼ぎ出しました。世界で1億回も読まれたんですよ。実はこの記事を作ったのは、私の妻なんですけどね」。勝ち誇ったような笑い声が、耳にこびりつく。
 「『大きい』とか『たくさん』のような普通の言葉を使ってはダメなんですね。『途方もない』『ものすごい』『計り知れない』『壮大なスケールの』『天井知らずの』など大げさなフレーズを使うんです。『ここだけの』とか『速報』とかをつけ加えれば、クリックの獲得は間違いなしです。中身は必ずしも事実でなくても良いのです」
 去年、フェイスブックやグーグルは「フェイクニュース対策」を強化すると発表。ヴェレスの若者のサイトやアカウントは次々と閉鎖された。しかし彼らは、今なおフェイクニュース作りを続けている。今回、フェイクニュース作成者10人近くに話を聞いたが、その中には警察官もいた。彼らは「そもそも国や企業が出す情報もウソばかり」と言い、ウソをつくことへの閾値が、私たちとはまるっきり違うのだ。
 ある家族を訪ねた際、私は、絶句するしかなかった。まだあどけなさの残る17歳の男子高校生が、事実をねじ曲げたウソの記事をスラスラと作り上げ、あっという間に全世界に発信していた。それを横で見ていた母親は、止めるどころかむしろ、もっと面白いウソをつきなさいと煽っている。
 『衝撃ニュース! サンドラ・オー(カナダ出身の有名女優)がケガをして、ドラマを降板した』――目の前で、高校生が作り上げたフェイクニュースだ。両親の年収を優に超える稼ぎを手にし、その金でイタリア製のバイクを買ったばかりだという。
 「罪の意識はないのか?」と尋ねると、息子は「クラスメイトの4割くらいがフェイクニュースを作ってるよ」と言い、母親は「それほど悪いことだとは思いません。お小遣いをあげなくて済んで家計は助かっていますし、息子にはもっと頑張って欲しい」と悪びれることもなく言い切った。私にとっては異常な光景が、彼らにとってはただの日常だった。フェイクニュースがなくなる日は、はるか遠い先のことかもしれない。
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 いかがでしたか。この記事を読んで暗澹たる気持ちになります。「自分はフェイクニュースに騙されないぞ。」と自信を持って言えるでしょうか?そういう私も今冬に配信された『記録的な寒波で、ナイアガラの滝が完全凍結した』の記事にすっかり騙されてしまいました。確かにアメリカでは当時記録的な寒波が続いていましたが、あの巨大なナイアガラ瀑布が完璧に凍結してしまうことは常識的にあり得ません。氷河期を除いてはあの滝の莫大な水量はどんな手段を用いても止められません。
 何となく新聞やネット等のニュースを読むと騙されることになります。特に日本の各新聞社、テレビ局は「社是」の方針なのか、フェイクニュースを流すというよりは、世界で進行している重大なニュースに対して「掲載しない、沈黙を続ける」という奇妙が現象が見受けられます。この件に関してはいずれブログで述べてみたいと思います。
 世の中はSNSで情報が広がる傾向にありますが、フェイクニュースを知らない大衆がフェイクニュースに踊らされ、それが暴動に発展する日も近いと思われます。特にAIの発達により、国家の首脳の動画を編集し、声紋を利用した動画を流すことにより、大衆を簡単に扇動する時代が来ることでしょう。そのような時代の到来について私たちは情報源がフェイクであるか否か、様々な情報を元に冷静かつ客観的に判断することを迫られています。とんでもない世の中になったものです。
 特殊詐欺やフェイクニュースを作成する輩は幼い時に親から、そして学校で習わなかったのでしょうか?「嘘つきは泥棒の始まり」だということを。

2019年05月26日