#555 スズメ

 日中はまだ夏日が続いていますが、朝夕は涼しく、秋らしい季節になりました。あと二週間もすれば各地で稲刈りが始まります。収穫後の田んぼにはスズメなどの鳥が集まり、落ち穂をついばむ姿を見ることができます。のどかな田舎の原風景がそこにあります。ところが私だけでしょうか、最近スズメの姿をすっかり見なくなりました。以前は電線などに多くのスズメが一列に並んで、さえずる声が聞こえたものですが、最近はあまりその姿を見る機会が減ってきたような気がします。この私の懸念は当たっていました。つい最近スズメなどの生物に絶滅危惧種の心配がでてきたのです。次の記事がその深刻な状況を伝えています。
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『スズメが絶滅危惧種に? 里山の鳥、チョウが急速に減少』
 環境省と日本自然保護協会は1日、国内各地で動植物の状況を定点観測した結果、里山に生息する鳥類の15%、チョウ類の33%で個体数が年3・5%以上のペースで減っているとの報告書を公表した。この減少ペースが長期間続けば、スズメなどの身近な鳥やチョウが環境省レッドリストの絶滅危惧種の判定基準を満たす可能性があるという。
 環境省などは2003年度から、全国のボランティアの協力を得て、国内1000カ所で生態系の変化を調査する事業「モニタリングサイト1000」を継続している。今回の報告書では22年度までの調査結果をまとめた。
 報告書によると、身近な鳥やチョウの減少が特に顕著で、スズメは年3・6%、日本の固有種のセグロセキレイは8・6%のペースで減っていた。オオムラサキの減少率は年10・4%とさらに深刻だった。農地や湿地などの開けた環境を好んで普段よく目にする種が減少していたという。
 環境省によると、地球温暖化で生存に適した気温ではなくなったことや、管理されなくなった里山が増えて生息環境が変わったことなどが背景にあるとみられる。
 調査に助言などをする専門家委員の石井実・大阪府立大名誉教授(昆虫生態学)は「深刻な結果だ。全国規模で里山の自然環境が変貌している」と話す。
 里山以外でも気候変動の影響とみられる変化が表れている。全国的に南方系のチョウが増加し、暖かい気候を好む樹木が増えた。アカガエルの産卵日が10年で5~10日早まり、サンゴ礁では夏の高水温が原因とみられる白化現象が頻繁にみられるようになった。
 湿地の減少など環境悪化による影響も深刻だという。シギやチドリなど内陸の湿地や沿岸域に生息する鳥類が10年間で半減し、島しょ部ではカモメ類が大きく個体数を減らしたことが分かった。
 日本自然保護協会は調査結果を受け、生物多様性の回復に向け、モニタリング体制の強化とともに、地域で環境保全を進めるために「官民の支援の充実が求められる」などとする提言を公表した。
https://mainichi.jp/articles/20241001/k00/00m/040/201000c
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 上記にあるように、私達人間の生活と共に生きてきたスズメの数が激減しています。確かに田舎の人口減少に伴い、農地や里山が適切に管理されなくなったのが原因の一つと考えられます。ヒグマが住宅地に現れる現象も同じ理由からでしょう。以前は里山と森林の境界に柿などの実のなる木を野生動物のために植えておき、彼らの寒い時期の食料としていました。しかし人口減少により森林の手入れができず、その影響で動物が食べるエサが無くなり、結果としてヒグマなどの野生動物が人里に出没する事例が多くみられます。昨日のニュースではヒグマが出没しないように、人里の境界にある柿の木を切り倒すということが行われていました。何か本末転倒のような気がします。
 自然環境を私たちが守り、手入れすることで、そこで暮らしている生物の環境を守ることができます。太古から人間と自然はお互い切り離せない存在です。他の生物の存在を無視する人間中心の文明は自然崩壊とともに滅んでいくことでしょう。自然保護のために今何らかの対策を立てなければ、昨今の世界中で起こっている自然災害のように人間の生活を破壊することになり、現代文明は終わりを迎えます。スズメの減少はその一端を表しています。

2024年10月06日