#148 クリスマスイブに

 

 今日24日はクリスマスイブで、明日25日はクリスマスになります。日本では12月25日は休日になりませんが、欧米のキリスト教国ではではクリスマス休暇を取る国が多くあり、およそ1週間の休暇を取る人達がほとんどです。その代わりに正月は1月1日のみ休日となり、1月2日から仕事が始まります。国が違えば社会習慣もかなり異なります。
 私は幼い頃にクリスマスはプレゼントをもらい、ケーキを食べる日だとばかり思っていました。クリスマスの本当の意味を理解したのはずいぶん大きくなってからのことでした。キリスト教国ではない日本でクリスマスの意味を理解している人がどれだけいるかは疑問ですが、世界中でなぜクリスマスを祝っているのか、少し立ち止まって考えてみるのもよいでしょう。
 さて今日はクリスマスイブにちなんだ話をご紹介しましょう。英語の問題集などでも掲載されていますし、1990年代のセンター試験の出題源にもなった本に「心のチキンスープ」(Chicken Soup for the Soul)という英語の本があります。心温まる内容ばかりを集めた本ですが、英語のシリーズ本は現在までに10数冊発行されています。そのシリーズ最初の本の中に"A brother like that"という一文があります。今日のクリスマスイブに相応しい名文です。

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A brother like that (from Chicken Soup for the Soul)

 これはぼくの友達、ポールの話である。ある年のクリスマスイブのこと、ポールは兄さんからクリスマスに新車をプレゼントしてもらった。ポールがオフィスから出てくると、街でよく見かける少年が、そのピカピカの新車の回りを歩き回っていた。よほどその車が気に入ったらしく、ポールに話しかけてきた。
「この車、おじさんのかい?」
「ああ、兄貴からのクリスマスプレゼントさ」
 と、うなずきながらポールは答えた。少年はそれを聞いてひどく驚いた様子だった。
「えっ?おじさんの兄さんがくれたって?おじさんは全然お金を払わなくてよかったの?うわあっ、すごいな!ぼく・・・」
 と、少年は何かを言いかけたが、そのまま口をつぐんでしまった。少年は、「ぼくにも、こんな兄さんがいたらなあ」と言いたかったのだろう、とポールは思った。ところが、少年の口から出た言葉にポールは耳を疑った。
「ぼくね、おじさんの兄さんみたいになりたいなって思ったんだ」
 ポールは、まじまじと少年の顔を見つめていたが、自分でも思いがけない言葉が口をついて出ていた。
「この車に乗ってみるかい?」
「本当?ウン」
 車を走らせてまもなく、少年の目はキラキラと輝き始めた。
「おじさん、ぼくの家の前まで乗せてくれる?」
 ポールはおもわずニヤッとした。きっとこんな大きな車で帰ってくるところを近所の人たちに見せて、自慢したいんだなと思った。しかし、その憶測はまたもやはずれた。
「あそこに階段がついている家が見えるだろう?そこでちょっと待ってくれる?」
 少年は車を降り、駆け足で家に入っていった。しばらくすると家の中から、ゆっくりとした足音が聞こえてきた。少年が体の不自由な弟を背負って出てきたのだった。弟を階段の一番下に座らせ、車がよく見えるように弟の体を支えた。
「ほら、お前。見てごらん。さっき言ったとおり、すごい車だろ。そこにいるおじさんの兄さんがクリスマスプレゼントにくれたんだって。それも、まるっきりタダでくれたんだって。お前も待ってなよ。兄ちゃんが、いつかきっとあんな車をおまえに買ってやるからね。そしたら、いつも話してるクリスマスのきれいな飾りを、その車に乗って見に行こうね」
 それを聞いたポールは何も言わずに車を降りると、少年の弟を抱き上げ車の助手席に座らせた。目をキラキラ輝かせた少年もその横に乗り込むと、三人はドライブに出かけた。本当に素晴らしいクリスマスのドライブだった。
 このクリスマスの日、ポールは聖書のみことばをしみじみ感じたのである。
「受けるよりは与える方が幸いである」
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 クリスマスの本当の意味をどれだけの人が知っているでしょうか?今年もクリスマスがやってきますが、本当にクリスマスの祝福が必要な子どもは周りから相手にされない子どもたちや、貧しい家庭の子どもたちかも知れません。

Merry Christmas to those people in need!

2017年12月24日