#423 ロシアとウクライナ

 ロシアがウクライナに侵攻してから、連日トップニュースで各テレビ局が報道しています。様々な専門家が番組に出演して軍事から経済の影響まで幅広く論じていますが、ウクライナとロシアの歴史的関係があまり述べられていないのは残念です。この2か国の今までのつながりが理解できなくてはこの戦争の真実が見えてこないからです。本日はその歴史的な流れに沿って説明しているサイトから転載します。2月21日の公開ですので多少、時間的なズレはありますが、両国の歴史観を知るには充分です。
----------
 ロシアとウクライナの間には大きな歴史上の認識の違いがあり、それが現代まで様々な紛争に結びついている側面があります。
 ロシアとウクライナの祖ともいうべき国は、9世紀ごろにヴァリャーグと呼ばれた北欧のバイキングが立てたルーシという国です。
 やがてこの国の中でキエフが有力となり、世界史ではキエフ大公国なんて呼ばれたりします。(テストではそう呼ばれますが正式国名はルーシのままですし、別に大公とかいませんでしたが)しかしキエフ大公国は13世紀にモンゴルに滅ぼされ、その支配下となってしまいます。
 さてそこまではロシアもウクライナも同じ認識なのですが、問題はその後です。
間も無くタタールのくびきと言われたモンゴルの支配が衰え、独立した東スラブ人の国々は我こそはあの輝かしいキエフ大公国の後継者であると主張します。
 その一つが現在のロシアの直系のご先祖様モスクワ大公国。
もう一つが現在のウクライナにあったハールィチ・ヴォルィーニ大公国です。
 そしてここで大きな認識の差が生まれます。ロシア人からすればルーシはモスクワ大公国が引き継いだと考えます。だからロシア人にとってキエフのあるウクライナは同じルーシ発祥の地であり、日本人で言えば京都のような印象を持っています。
 一方ウクライナ人はハールィチ・ヴォルィーニ大公国こそがルーシの正統後継者であり、この時点でウクライナは独立したのだと考えるのです。
 その後の歴史は非常に面倒なので省きますが、プーチン大統領が経済的にはどう考えても割の合わないウクライナへの軍事的干渉を辞めないのは、ルーシの統一を熱望するロシア人の歴史認識(しかしウクライナはそれを望まない)が根底にあると私は考えています。
(大山 敬義)株式会社バトンズ CEO
----------
 今週の展開は、ミサイルや空爆で始まりますが、ここに至るまでには、原因としての歴史があります。
 ウクライナは、何百年もの間、ロシアの統治下に入ったり、独立したりを繰り返してきました。朝鮮半島と中国のような関係ともいえます。
 最初にウクライナがロシアの支配下に入ったのは18世紀です。それまでのウクライナは、リトアニア、ポーランド、トルコとロシアが奪い合う地域でした。
 クリミア半島周辺には、クリミア汗国という、モンゴルの末裔のムスリムの国がありましたが、1783年にロシアに滅ぼされました。この子孫が、今のウクライナの少数民族、クリミア・タタール人です。
 その後、19世紀を通して、ロシア帝国によるウクライナのロシア化が進められ、ロシア語が普及されました。
 1917年のロシア革命で、ロシア帝国が倒れたのを契機に、ウクライナ人たちは独立を宣言しました。しかし、ソ連の侵攻を受け、1921年まで続いたソ連・ウクライナ戦争(ウクライナ独立戦争)の後、ソ連に組み込まれました。
 その後、1920年代から30年代にかけて、ホロドモールと呼ばれる大量餓死の時代が来ます。豊かな穀倉地帯であるウクライナは、食糧難と財政難で極めて不安定であった初期のソ連で、収奪の対象となりました。穀物や家畜が社会主義の名によって接収され、外貨獲得のために輸出もされました。餓死者は、少なくとも400万人、1000万人にのぼったという説もあります。
 1941年、ドイツがソ連に侵攻してきたのに呼応して、一部のウクライナ人はドイツ軍に呼応して、ソ連への反乱を起こしました。第2次世界大戦は、最終的にソ連が勝利し、ウクライナ人やタタール人は強制移住させられ、彼らの農地がロシア人に与えられたりしました。
 ウクライナが独立を得たのは、1991年、ソ連が崩壊した結果です。ここに至るまでの歴史は、ウクライナ人がロシアの支配を嫌悪するには十分すぎるのですが、ロシア人は加害者としての自覚が非常に希薄です。
 ロシア人の圧倒的多数は、ウクライナ人を何百万人も餓死させたことなど知りもしません。ロシアの一部になるのがなぜそんなに嫌なのか、まったく不思議だ、くらいが、世論の大勢でしょう。ロシア帝国の頃からそうでしたが、虐げられる人々への理解と共感の完全な欠如が、世界最大の版図になるまで領土を拡大するのを可能にさせました。
(塩崎 悠輝 )静岡県立大学国際関係学部 准教授
(https://newspicks.com/movie-series/14?movieId=1886)
----------
 いかがでしたか。この両国に限らずヨーロッパ各国は複雑な歴史を抱えています。例えば第2次世界大戦ではドイツやイタリアが他のヨーロッパ諸国と戦いましたが、今はEUのトップとしてドイツは君臨しています。また隣に面した各国は歴史を通して常に敵対する関係が続いています。イギリスとフランスなど枚挙にいとまがありません。
 次回のブログではロシアに対してもう一つの見方をご紹介します。お楽しみに!

2022年03月13日