#201 誰もいない海

今はもう秋 誰もいない海
知らん顔して 人がゆきすぎても
私は忘れない 海に約束したから
つらくてもつらくても 死にはしないと  
(♪トワエモア)

 一日ごとに秋らしくなってきています。この時期は早朝と日中の温度差が一年で最も大きく、最低気温が10度近くに下がりますが、最高気温が24度前後あり、昼間は半袖でも過ごしやすい気候です。しかし、夜はかなり冷えますので、風邪を引いたり、体調を壊したりしますので健康に充分ご留意下さい。
 さて、冒頭の歌詞は伝説のデュエット「トワエモア」のヒット曲「誰もいない海」の歌詞の冒頭です。夏には海水浴に多くの人が海を訪れますが、この時期になりますと朝夕散歩で訪れる人がいる程度で、日中浜辺で戯れる人はすっかりいなくなり、静かな海に戻ります。次に賑やかな海に戻るのは来春の潮干狩りの時期でしょうか。
 人間は現金なもので、自分が必要としているものについては褒め称え賛美します。卑近な例は桜花です。毎年桜の満開の季節には多くの人が身近な公園に足を運び、桜花の下で宴を催しますが、桜の花が散ってしまうと見向きもされなくなります。そのような桜木は来年の開花に向けて人知れずに秋には蕾をつけ、蕾のままで越冬して春にまた開花します。このように考えますと、海にしろ桜花にしろ、人が存在する以前から同じことを延々に繰り返し続けています。変わっていくのはいつも人の心です。
 海で思い出しましたが、昨今世界中で問題になっているのがプラスチックごみの問題です。特にマイクロプラスチックごみは外洋まで達しており、海洋生物に多大な影響を与えています。ニュースでよく引用される動画がウミガメの鼻に刺さったストローを取り出す場面です。ウミガメが痛さのあまり涙をこぼす画面が世界に衝撃を与え、特にアメリカではプラスチック製ストロー全廃に向けて大きな一歩に繋がる要因となりました。このプラスチックごみの影響に関して東京大学は次のようなコメントを出しています。
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 海の生き物に必要な栄養は、まず、海の表層にいる植物プランクトンが、太陽の光を受けて光合成で作りだします。それを小さな動物プランクトンがえさにして、さらに魚などが、その動物プランクトンを食べます。
この動物プランクトンが、植物プランクトンと間違えてマイクロプラスチックを食べてしまっていることが、最近の研究でわかりました。この動物プランクトンを魚が食べ、その魚をさらにサメやクジラのような大型の生き物が食べることで、海の生き物全体にマイクロプラスチック汚染が広がっていくる可能性があります。また、動物プランクトンが栄養のないマイクロプラスチックを食べて満腹になれば、発育不足になって生態系のバランスがくずれるかもしれません。
 プラスチックにかぎらず、物体の表面にはさまざまな物質が付着しやすいので、マイクロプラスチックが生き物の体内に入れば、それと同時に、表面についた有害な物質が取り込まれる可能性もあります。プラスチックそのものに有害な物質が添加されていることもあります。
実際に、魚や貝、水鳥などの体内から、プラスチックや、そこから溶けだしたとみられる有害物質がみつかっています。
 プラスチックのごみは、海流や波、風によって世界の海に広がっていきます。その実態調査には費用も人手もかかるので、全体像を正確に把握できるところまではいっていません。
とくにマイクロプラスチックについては、海面で確認される量が予想より少なく、どこかに行ってしまっているのを見逃しているという見方もでています。相当な量のマイクロプラスチックが、すでに海のどこかにたまっているのかもしれません。
(東京大学海洋アライアンス)https://www.oa.u-tokyo.ac.jp/learnocean/news/0003.html
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 プラスチックは私たちの現代生活にとり必要不可欠なものですが、私たちが気づかないところで様々な悪影響を与えています。それが回り回って人間の生活に悪影響を与えることになります。プラスチックを材料にしたPETボトルは環境ホルモンの一因になっており、私たちの日常生活に忍び寄ってきます。文明の利器を利用する際には将来の影響を考えるだけでなく、地球の生物に与えうる潜在的な可能性にも目を向ける必要性があります。

2018年10月14日