#238 子どもの貧困対策に「給食費無償化」?

 今年のゴールデンウィークはどのようにお過ごしになられたでしょうか。長かった連休も明日で終わり、5月7日(火)から普通の日常生活に戻ります。今年は長い休日のために5月病に罹る人が増えるのではないかと心配しています。一方では子供たちが学校に戻っていくので内心ほっとされているお母さんたちもいらっしゃることでしょう。今月は運動会や体育祭、文化祭など様々な学校行事が予定されています。子供たちも学校生活に戻り、また慌ただしい日々を過ごすことでしょう。
 さて今日は「子供の日」ですが、昨日のマスコミ報道によりますと、子供の数が38年連続で減少しており、それに伴い日本の人口も減り続けることになる旨の内容を放送していました。確かに人口減少は国力の衰退にもつながり、喫緊の課題となっています。その子供を巡る問題の1つとして学校給食があります。経済的に困窮している家庭の子供たちが給食費を払えない問題です。
 本日の "DIAMOND on line" にこの問題に関する記事がありましたので、長文になりますが紹介します。

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『子どもの貧困対策に「給食費無償化」が最適な理由』(https://diamond.jp/articles/-/199656)

本当に必要な家庭に届いていない「就学援助制度」
 子どもの学校関連の出費のなかで、最も大きな割合を占めるのが給食費である。文部科学省「平成30年度学校給食費調査」によれば、給食を実施している公立学校の保護者の年間負担額は、1人あたり小学校4万7773円、中学校5万4351円となっている。貧困家庭には、この給食費が大きな負担になる。その給食費を含む、学校に通うのに必要な費用を援助する制度が「就学援助」である。
 就学援助とは、学校教育法第19条で「経済的に就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と定められている制度のことだ。就学援助などの支援を受けている小中学生は、2015(平成27)年度で約6人に1人、全国で149万人にのぼり、最も負担が大きい学校給食費をはじめ、学校で勉強するために必要な文房具・楽器などの学用品代や、クラブ活動費、PTA会費などが支給される。
 ただし、就学援助は自治体間で格差が大きい上に、必要な家庭に届いているとはいえない現状がある。
「生活保護なども同様ですが、行政による支援を受ける場合、保護者が自ら就学援助の申請をしなければなりません。しかし、本来その必要性が高い家庭ほど、支援内容や申請方法について情報を把握していないケースが多く、制度対象から漏れている可能性が高いのです」(鳫氏、以下同)生活保護に比べて、就学援助という制度の知名度がそれほど高くないが故の現象である。

横浜市の公立中学校の給食実施率はゼロ
 また、給食の有無や、その充実度も自治体によって大きく事情が異なる。小中学校の昼食には、「完全給食(ミルク、おかず、主食)」、「補食給食(ミルク、おかずのみ)」、「ミルク給食(ミルクのみ)」、「給食なし」の4パターンがある。そもそも学校給食が実施されていない自治体も、まだ少なくない。
 前述の文部科学省「平成30年度学校給食実施状況調査」を参照すると、全国の完全給食実施率は、公立小学校は98.8%だが、公立中学校では79.0%とやや数値が下がる。「神奈川、近畿地方、高知、広島、九州北部の各県の完全給食実施率は低く、そのなかでも特に、横浜市の公立中学校の完全給食実施率は何と0%。完全給食以外だと、給食費が少ない、もしくはゼロですから、給食費を支援する就学援助の金額も少なくなる。貧困解決にならないのが現状です」
 2016年7月、横浜市は市立中学校12校で給食の代わりに「ハマ弁」という配達弁当を導入。2017年1月には、全145の市立中学校に拡大したが、「おいしくない」との評判が多数で、昨年12月の利用率はわずか2.6%と、まったく普及していない。

 しかし、ハマ弁の利用率が上がらないのは、味以外にも大きな理由があると、鳫氏は指摘する。「これは横浜市独自の制度なのですが、子どもの立場になって考えてないことは明らか。というのも利用者が少ないのは単に味の問題だけでなく、周りの友人から『あの子は弁当をつくってもらえなくてかわいそう』などと思われることを気にするあまり、非常に注文しづらいという背景があるのです」
 学校給食の歴史を振り返ると、始まりは1889(明治22年)年、山形県鶴岡町(現・鶴岡市)の忠愛小学校で貧困児童を対象に無償で行われたのが発祥といわれている。鳫氏によれば、その後も貧困救済として給食を支給される子どもに負い目を感じさせないよう、教師たちも気遣う必要があったという。横浜市は、学校給食制度当初と同じ問題を抱えているのだ。

年間5120億円あれば無料で給食が食べられる
 このように、就学支援制度や給食事情が自治体によって大きく異なるために、子どもの学校にかかる費用のうち最大割合を占める「給食」に関する支援がなかなか行き届かない。こうした現状の中で、鳫氏が提唱するのは、「完全給食にして、給食費を一律無償化する」ことだ。よくある「お金持ちの家庭まで無償にする必要はあるのか」という意見に対しては、こう反論する。
「高校授業料無償化のときも同じ議論がありましたが、個人の所得を把握するのはとても大変でコストもかかります。また、給食はどの子どもにとっても大事なものですし、所得の多い家庭はたくさん税金を納めていると考えれば、不平等とはいえません」
 2016年に行われた政府の経済財政諮問会議では、子ども・子育て世帯の支援対策として、給食費無償化が提案され、そのためには年間5120億円が必要になるとの試算が示された。学校給食は1食あたり、250~300円ほどの安価でありながら、栄養バランスがとれている。地域によっては、「おいしくない」などという課題もあるとはいえ、貧困家庭には非常に助かるはずだ。
 ここ数年、貧困家庭の子どもを念頭に月に数回、無償で食事を提供する「子ども食堂」という活動も活発化し、全国各地2200ヵ所にまで広がっている。ただ、「子ども食堂」は貧困対策というよりも、地域のコミュニティー活動としての役割を担う側面の方が大きい。給食費をタダにして、誰もが未納の心配なく平等に学校給食が食べられるようになれば、貧困に苦しむ子どもたちが間違いなく救われる。あらためて、学校給食の意義を社会で捉え直す必要があるだろう。
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 確かに貧富の差にかかわらず、子供たちが同じ給食を食べることができるのは理想ですが、それに必要な年間5120億円をどこから捻出するかが大きな問題となります。衣食住足りて最低限の文化的生活ができますが、親の経済状態に関わらず、せめて子供たちには学校で十分な食事を与えてやりたいものです。子供の日にあたり、このような記事を紹介させていただきました。

2019年05月05日