#335 はやぶさ2カプセル帰還!

 本日午前2時半過ぎに、はやぶさ2から放出されたカプセルがオーストラリアの砂漠に着陸し、無事地球への帰還を果たしました。NHKではこのカプセルが大気圏突入から着陸までを特別に放送し、私もその時間眠気を戦いながらテレビの画面に見入っていました。特に大気圏突入後にオレンジ色に燃える流れ星のような軌跡を描いて飛び続ける姿は感動的でした。今朝早くカプセルが回収され、早ければ明後日には日本に帰って来るそうです。
 はやぶさ初号機はあくまでも実験機で、初号機から得られた多くのデータが今回のはやぶさ2号機の成功につながっています。はやぶさ初号機が多くの苦難を乗り越えて無事に地球に帰還した様子が何本かの映画になって上演されましたが、私もその1つを鑑賞した記憶があります。特に初号機が地球に突入し、カプセルを投下した後で最後には燃え尽きましたが、その姿は我が子を命に代えても産み落とす母親の姿にも似ており、日本中の人々に感動を与えました。その初号機が地球に突入する前に最後に移した地球の写真を私は今でも手元に置いています。
 今回の2号機の成功の裏には初号機にはない様々な工夫がされたと聞いています。はやぶさを動かしているのはイオンエンジンという特殊な推進装置ですが、これは日本人が発明したエンジンです。従来の化学燃料を使用するロケットエンジンは強い推進力を出しますが燃料の重さがロケットの大半を占め、非常に非効率的な推進装置です。しかしイオンエンジンは推進力は微力ですが長時間に渡りエンジンを作動することができ、「ちりも積もれば山となる」で遠距離まで飛行することができます。2号機はカプセルを地球に投下した後向きを変えて新しい小惑星への約10年間の旅に出かけます。はやぶさ2号機の新しい門出を祝福したいと思います。
 ところで、はやぶさ2号が世界で初めて成し遂げた偉業が7つあるそうです。その記事を掲載します。
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「はやぶさ2」帰還で実現する7つの偉業とは
〇前回のはやぶさは本番前の実験機
小惑星の探査計画がスタートしたのは1995年3月。小惑星サンプルリターン計画が、その後、はやぶさの打ち上げへとつながっていった。
 小惑星サンプルリターンとは、それまでNASAが行っていた小惑星探査を一歩進めて、小惑星のサンプルを採取して地球へ帰還させるプロジェクトだ。これまで人類は月以外の天体のサンプルを地球へ持ち帰ったことはない。しかも地球から3億キロ離れた小惑星イトカワ(ちなみに地球と月の距離は約38万キロである)相手にやろうというのだ。これがいかにハードルの高い挑戦か、わかるだろう。
 前回のはやぶさの成功を受けて、2014年12月3日に打ち上げられた『はやぶさ2』は、はやぶさの後継機ではない。実は前回のはやぶさは小惑星サンプルリターンの実験機で、本番での観測は、はやぶさ2で行われたのだ。はやぶさ2で行った人類初のミッションは次の7つである。

・複数の探査ロボットの小天体(今回はリュウグウ)への投下
・小型探査ロボットによる小天体表面の探査
・天体着陸精度60センチメートルを実現
・人工クレーター作成とその過程、作成前後の詳細観察
・1機の探査機が同じ天体の2地点に着陸
・地球圏外の地下資源にアクセス
・最小/複数の小天体周回人工衛星を実現

 いずれも今後の天体探査を変えていく重要な技術だ。その意味でも、はやぶさ2の無事な帰還は宇宙技術史に重要な足跡をしるすことになる。

〇小惑星探査が極めて重要な理由
そもそも「なぜ小惑星を調べる必要があるのか」と疑問に思う人も多いだろう。はやぶさプロジェクトは、あの民主党政権による事業仕分けで予算が激減するという日本の科学発展の暗黒期があったものの、打ち上げが行われた2014年度は126億円の予算が計上された。
 これほどの金額について、「生活に困っている人も多いのになぜ?」とか「月や火星をもっと詳しく調べる方が役に立つのではないか?」などと考える人もいるだろう。
 もちろんそうした惑星探査は重要だ。特に地球の資源に限界が見え始めた現在、月に資源探査基地を作ることは夢ではなく100年後を見据えた重要な国際プロジェクトである。
 しかし一方で、小惑星を調べることも極めて重要だ。太陽系は宇宙のチリやガスが集まって太陽が生まれ、太陽の回転が周囲のチリをさらに集めて、太陽の周りをたくさんのチリの塊が回り始めた。この塊がさらに集まって地球のような惑星を作った。地球は誕生後に火山活動を始め、惑星になる前の状態はどこにも残っていない。
 惑星になれなかったものが小惑星として今も太陽系を回っている。つまり小惑星を調べることで、太陽系ができたころの様子を知ることができるのだ。

〇はやぶさ2が生命の原料を持ち帰る?
 生命が地球に誕生した仕組みはいまだにわかっていない。生命のもととなるアミノ酸や核酸といったものが地球上でどのようにして生まれたのかさえも仮説の域を出ない。複雑な構造を持つ有機物は、原始の地球では生まれず、小惑星が地球に衝突してもたらされたのではないかと考える学者は多い。
 1970年にオーストラリアで採集されたマーチンソン隕石からアミノ酸が見つかり、その後も隕石からアミノ酸が見つかり続けていることから、すべてかどうかはともかく、地球のアミノ酸の一定量は隕石が運んできたという考えは誰も否定しない。
 隕石の元をたどれば小惑星だろうと考えられている。小惑星から分かれた隕石が地球に衝突したことがきっかけで有機物が揃い、生命の生まれる条件が整ったことになる。リュウグウから採取したサンプルにアミノ酸のような有機物が含まれていれば、小惑星が生命の原料を供給したことが確定する。
 はやぶさプロジェクトのもうひとつの意義は、小惑星の衝突から地球を守ることである。恐竜が絶滅したのは、ユカタン半島に落ちた直径10キロ(サイズには諸説あり、最大では80キロという説も)の隕石のせいだ。直径160キロのクレーターを作った隕石は、大量の粉塵を成層圏まで噴き上げ、火山灰に日光を遮られた地球は寒冷化、草木が枯れて恐竜は餓死した。
 はやぶさ2の誘導技術を使えば、地球へ向かってくる小惑星に人工衛星をぶつけ、地球からそれる軌道へはじき飛ばすこともできるだろう。
 太陽系には100万個もの小惑星があり、すべてが手つかずの資源である。はやぶさ2の成功を使い、こうした小惑星の資源開発ができれば、もし地球の資源がなくなっても安心だ。
 リュウグウには正体不明の黒い物質(高分子の有機物ではないかと推測されている)や水(土に微量の水が含まれていると推測されている)があるとされ、科学者たちはサンプルの回収を待ち望んでいる。はやぶさ2がどんな秘密をもって帰還するのか、とても楽しみである。
(https://diamond.jp/articles/-/256260)
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 宇宙開発には多額の費用がかかり、現在ではアメリカ1国だけでは宇宙探査や開発ができない状況です。隣国は軍事利用のために無人宇宙船による月面着陸を行い、自画自賛しています。人口爆発が続いている地球で自然環境をこれ以上悪化させないためにも宇宙開発は必要になってくるものと思われます。宇宙の平和利用のために各国が資金を出し合い、最初に月面にコロニーを建設し、さらに遠くの火星へと人類は旅立つことでしょう。それまでには少なくとも数百年を要することになります。またさらに文明が進めば地球人類が太陽系外の宇宙へ進出することも可能でしょう。その意味で私は数百年早く生まれたと後悔しています(笑)。今後も宇宙開発を続けてもらいたいと思います。

2020年12月06日