#246 世界でたったひとりの自分を大切にする

 九州北部はようやく入梅となりましたが、「降れば土砂降り」で昨夜はかなりの雨が降り、熊本や甘木など非難情報が出た地域もあったようです。しかしながら、稲を育てている農家の方にとっては嬉しい梅雨の到来となります。
 入梅したことで、あの嫌な感覚が戻ってきました。そうです。肌にまといつくような、あのべたべたした湿気の感覚です。太平洋高気圧が暑さと共に湿気も運んできます。この感覚は夏が終わるまで続くことになります。来年の東京オリンピックはこの湿度の高い亜熱帯気候のような状況下で行われます。選手だけでなく観客にも熱中症対策が求められることでしょう。
 さて、雨の休日はゆっくり家で過ごすのが一番です。読みたい本を開いて頁をめくる至福の時間は何よりも大切です。今日は久しぶりに鈴木秀子さんの本を取り上げてみたいと思います。本日のブログタイトルは最近手にした本のタイトルです。内容を紹介する意味で、本の前書きから引用します。

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『人生を支える「2つの心」』
 人は誰しも「自分にないもの」を求めたがるものです。あの人はいいものを身につけている。美人でスタイルもいい。みんなから愛されている。いい結婚をしたあの人がうらやましい。子供がいない人は自由で楽しそう。自分の仕事で輝いている人がまぶしく見える。
 自分ももっと〇〇だったら、もっと幸せになれるのに......。あの人みたいになれたら、人生が楽しいだろうに......。自分と他人を比べて、「うらやましい」「自分は損をしている」と思い込んでしまうのです。
 でも、このような思い込みは、すべて自分の心が作り出した妄想です。事実ではない妄想に振り回されているだけです。振り回されているうちは、どんなにがんばっても心が満ち足りることはありません。幸せを感じることもできません。では、どうすればこの思い込みやめられるのでしょう。
 それは「他人をうらやむのは当たり前」「自分は今、そういう気持ちに振り回されてしまっている」と自分に言い聞かせてあげることです。
 私といっしょに暮している、魅力ある高齢のシスターの話です。彼女は聡明で成績もよく、学校の先生になりたいと思っていました。でも、出征した父親が戦死し、中学を卒業すると働きに出ることになりました。貧しい家を支えるため、師範学校に行くことをあきらめなければならなかったのです。
 彼女が働きに出る前の晩、祖母は彼女にこう言って聞かせました。
「人さまの持っているものを見て、うらやましがったり欲しがったりしてはいけないよ。」
 すると、聞いていた祖父がぽつりとつぶやきました。
「こんな若い子にうらやましがるな、だなんて酷だ。そういう気持ちにならないわけがない。うらやましがって当たり前だよ。」
 2人は少し間を置いて、もう一度同じことを繰り返します。祖母は「うらやましがってはいけない」祖父は「うらやましがって当たり前」と。
 彼女はこの言葉が、人生を生きる上でたいへん役に立ったと言います。
「おばあさんの言葉だけだったら、私は自分を『うらやましがるべきではない』と厳しく律し、つらい思いをしながら生活することになったでしょう。おじいさんの言葉だけだったら、自分を甘やかし気ままな人間になっていたでしょう。自分の中に、相反する2つの声がいつも聞こえていたからこそ、私は何が本当に必要かを考え、物事の中庸を取ることができたのです
 人と比べて心がかき乱れたときは、みなさんもこの「2つの心」を思い出しましょう。人は人、自分は自分。それでいい。そう思う気持ちがきっと芽生えます。

『心の土台を整える』
 あの人に負けないようにがんばらなければいけない。
 たくさん努力して一番を目指さなければいけない。
 こういう気持ちが起こるのは、決して悪いことではありません。人間ならば、むしろあって当たり前。他人を意識し、うらやましがるということは、生きるエネルギーに満ち溢れている証拠でもあります。
 ただし、他人との比較に価値を置き過ぎると、一生そうやって生きることになってしまいます。「〇〇が欲しい」「〇〇がないから不安」「〇〇でなければダメ」......これにとらわれてしまうと、一生そこをグルグル回り、心をすり減らすことになりかねません。
 比べること、評価することの中で自分を見ていると、自信はどんどん失われるばかりです。そこで大事なのが、「幸せになるための心の土台」を整えるということ。

『世間一般の常識ではなく、自分の幸せのものさしで考えてみるのです』
 昔の修道会には、「教えるシスター」と「労働するシスター」がいました。先にお話ししたシスターは成績優秀であったにもかかわらず、進学できなかったために「労働する人」になりました。
 「教える人」と「労働する人」では、仕事内容に違いはあれ、身分差はありません。でもこういうとき人はつい「教えるほうが上だ」「大学に行けなかったせいで身分が下になった」などと思ってしまいます。
 シスターも、そんな気持ちに揺れ動くことがあったかもしれません。でも、彼女は祖父母の言葉に耳を傾けることで、世間一般でではなく、自分自身の幸せのものさしを手にすることができました。祖父母からの教えが、彼女に「幸せになる心の土台」を与えてくれたのです。
『人間が幸せになるための「3つの絆」』
 「心の土台」を作る方法を、もう少し具体的に考えてみましょう。心の中で「3つの絆」を育てるのです。1つ目は「自分との絆」。2つ目は「他人との絆」。そして3つ目は「自分を超える大きな力との絆」です。この3つがしっかりと育まれれば、幸せの土台はおのずと築かれます。たとえどんな苦難が訪れても、幸せを見失うことはないでしょう。
 1つ目の「自分との絆」とは、ほかならぬ自分自身との絆です。
 人は他人の目は気にするものの、自分のことはいい加減にしがちです。他人の評価でウロウロし、自分を責めてイライラする。これでは、いくらがんばっても自分との絆は育まれません。長い人生の中には、つらいこと、苦しいことがたくさんあります。それを乗り越えるには、地を足につけて「自分は自分でいい」と言って聞かせることで、自分との絆を強めることができます。
 2つ目の「他人との絆」とは一人ひとりの個性を認めるということ。
 この世界は異なる個性の人々で成り立っています。それぞれが異なる個性を持っているからこそ、私たちはつながり合い、補い合い、生きることができます。考え方がまるで正反対の人も、自分を生かす大切な存在である。それを心に刻むことが、他人との絆を作るということです。
 3つ目の「自分を超える大きな力との絆」とは、人間の中にある、大いなる存在を感じることです。
 私たちは単に「生きている」のではなく、神様から分け与えられた聖なるもの=愛や尊厳によって「生かされて」います。たとえ神様を信じられなくても、大自然の山々や樹木、季節を彩る草花によって、私たちは命の尊さ美しさ、生きることの素晴らしさを実感することができます。
 身近にある何気ない自然の営みに感謝し、賛美すること。これが「自分を超える大きな力との絆」を育んでくれるのです。幸せになるための努力とは毎日少しずつ、この3つの絆を築くよう訓練していくことです。

「世界でたったひとりの自分を大切にする」 鈴木秀子(文嚮社)
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 梅雨の時期には雨に濡れたアジサイが似合います。適度の雨は田畑を潤し、作物を育てます。梅雨明けが7月下旬ですので、梅雨の時期が3週間ほど続くことになります。災害に充分気をつけて、この季節を乗り切りましょう。

2019年06月30日