#483 スマホ中毒

 4月末から3週間ほど週末毎に雨天が続きましたが、やっと本日晴天となりました。そこで午前中は当塾の庭の草取りを行ない、大型ビニール袋3つの分量となりました。油断しますとすぐ雑草が茂ります。冬には枯れてしまいますので、しばらく草取りしなくてもいいのですが、これからは草取りを怠りますと、すぐに雑草林が生じてしまいます。毎年ながら、うんざりする仕事ができてしまいます。晩秋になるまで自然との闘いがしばらく続きます。
 さて、最近何かと話題になる携帯電話・スマホですが、様々な意味で社会に大きな影響を与えています。スマホに関する書籍が10冊以上も出されています。そのような中で、実際どのような影響があるのか具体的に述べている記事がありましたので、かなりの長文ですが、本日はそれを転載します。
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『「節約」どころか時間をドブに捨てている…動画を倍速で見る人の脳に起きている「スマホ中毒」の恐怖』

<スマホはほどほどでやめられないようにつくられている>

 スマホなどのデジタル機器は、生活を補助する道具として長時間使いすぎないようコントロールして利用するならば、大きな問題は起こらないでしょう。しかし、なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとしで、やりすぎによってさまざまな弊害が起こるのです。
 「じゃあ、ほどほどでやめればいいのね」と思うかもしれませんが、スマホやタブレットのやっかいなところは、ほどほどにできないようにつくられていることです。
 たとえば、ちょっとスマホで調べものをしようと思ったとき、目的の検索が終わったらすぐにスマホの電源をオフにできますか?
 検索している途中で、気になる動画や別の記事を見つける。そこにLINEのメッセージが飛び込んでくる。そうなると、新しい通知にどんどん気持ちが引き込まれていきませんか?
 そしてあげくの果てには、最初に何を検索していたのかも忘れているでしょう。


<利用しているようでスマホに「利用されている」>

 みなさんは、動画すら、真剣に1本ずっと見続けることができなくなっていることにお気づきでしょうか。YouTubeのような動画共有プラットフォームは、ひとつの動画を見ているあいだもワザと気が散るようにできています。
 なぜなら、コロコロいろいろなところに飛んでもらったほうが、新しい広告がバンバン上がって、チャリンチャリンとお金が入るしくみになっているからです。要するに、ひとつの動画を長時間視聴されてもお金にならないので、気が散って依存しやすいように、みごとにつくられているというわけです。
 スマホを見ている人は、その都度、自分の意思で情報を選択していると思っているかもしれません。しかし、じつは「中の人」に操られている状態なのです。


<現代人の集中力を削ぐ「スイッチング」>

 自分の意思とは関係なく、見ている画面がコロコロ変わり、何かひとつに集中しようとしても、情報の割り込みが入り、注意が別のものにいってしまう。このような行為をくり返し、ひとつのことに集中する時間が極端に短くなる状態を、心理学の世界では「スイッチング」と呼んでいます。
 スイッチングをくり返し行っていると、注意力が散漫になり、集中力がどんどん短くなることがあきらかになっています。
 このことは、じつはスマホが登場するずっと前から指摘されていました。
 大きなきっかけは、1995年にWindows95という、容易にインターネットに接続できる機能を備えたパソコンOSが登場し、メールの着信などがリアルタイムで通知されるようになったことです。ほどなくして、パソコンで調べものやレポート作成をするアメリカの大学生のあいだで、本来やるべき作業を中断し、別のことを始めてしまうという現象が起こり始めました。
 その後、2000年代にFacebook、TwitterなどのSNSが登場すると、情報の割り込みはさらに加速し、学生たちの集中力低下が問題視されるようになりました。
 そこから、アメリカの大学生たちに対する観察研究が始まり、パソコンで宿題をしながらFacebookを使っている学生たちは、学業成績が下がり、睡眠障害やうつの症状が出やすいということも報告されています。


<スマホを持つだけであらゆる能力がダダ下がりする>

 つまり、スイッチングによる悪影響はもう20年以上前から言われていることなのです。明確な悪影響が指摘されているにもかかわらず、デジタル機器は排除されず、よりコンパクトなスマホやタブレット端末に進化して、私たちの生活に浸透し、生活必需品として君臨してしまいました。
 その結果、人の行動がどう変わったかといえば、スマホなどを持っているだけで、いろいろな能力がダダ下がりするようになりました。
 じつは画面を見なくても、スマホを持っているだけで気が散り「成績が下がる」「集中できない」「読解力が落ちる」という心理学的なデータが明確にあります。
 女性の場合はあまりないかもしれませんが、男性はよくスマホをズボンのポケットに入れておくことがあります。そうすると、着信が入っていないにもかかわらずブルブルっと震えたような感覚が起こる人がいます。これは、幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション症候群)と呼ばれていますが、そんな錯覚が起こるほど、スマホの通知に脳が過敏になっているのです。


<「パブロフの犬」と化したスマホ依存患者>

 なぜ人は、スマホの通知にここまで敏感に反応し、のめり込んでしまうのでしょうか。それは、LINEなどのインスタントメッセンジャーやSNSがコミュニケーションツールであり、人の気持ちを惹きつけやすく、麻薬的な中毒性、依存性が起こりやすいところに起因します。
 LINEなどでやりとりされる文章は、非常に短く、ときに絵文字やスタンプのみという場合もあります。それゆえ、短時間に多くのやりとりがくり返され、通知が届く回数も多くなります。その行動を続けた結果「通知が来たら見る」という反射ができてしまうのです。
 反射ができると、メッセージなどの内容にかかわらず、通知が来るだけで反応するようになります。やがて、通知が来ないときも「いつ来るかな?」と期待して集中力が散漫になります。
 ロシアの生理学者、イワン・パブロフが、犬にエサを与える直前にブザーを聞かせることをくり返し行ったところ、やがて犬は音を聞いただけで唾液を垂らすようになったという実験の話を聞いたことがある人も多いと思います。
 いわゆる「パブロフの犬」と呼ばれる「条件反射」の実験ですね。それと同じ反射のメカニズムが、みなさんの脳内にできてしまっているということです。


<スマホの通知でもドーパミンが放出される>

 しかも、この反射は予測がはずれたときに、より強化される場合があります。たとえば、「どうせ広告の通知だろう」と思ってスマホを見たら、恋人や片思いの相手からのメッセージだったといった場合です。これは、非常にうれしいし、ドキドキするでしょう。
 このように期待していなかったよいことが起こると、脳の深い部分にある報酬系回路が強く刺激され、ドーパミンが放出されます。
 ドーパミンは快楽や幸福感をもたらす神経伝達物質です。人がイキイキと意欲的に生活するうえで欠かせないホルモンのひとつですが、大量放出によって依存症を引き起こす場合もあるのです。
 たとえば、競馬やパチンコなどのギャンブルで大当たりを出すと、大量のドーパミンが放出され、快楽を感じます。そして、またこの喜びを味わいたいという気持ちから、どんどんギャンブルにハマりギャンブル依存症になるといった具合です。
 ほかにもドーパミンを活発にする作用があるものとして、アルコールや薬物があげられます。そしてスマホも、これらと同じメカニズムで依存症を引き起こすのです。


<カナダ人の成人の2割は「金魚と同じ集中力」>

 常に通知が気になり、ソワソワしていたら、生活面でいろいろなパフォーマンスが落ちるであろうことは容易に想像できるでしょう。
 とくに、スマホにかかわればかかわるほど、集中力はどんどん落ちていきます。
 みなさんは、「スマホを見ているときは集中している」と思っているかもしれませんね。しかし、スマホを見ながらも、結局はアプリのスイッチングを頻繁に行っており、まったく集中できていないのです。
 カナダのマイクロソフトが2015年に調査した結果によれば、カナダ人の成人のうち2割が、わずか10秒しか集中できず、「金魚などと同レベルの集中力」であることがあきらかになりました。マイクロソフトは、そのおもな原因をICT(情報通信技術)やソーシャルメディアの活用によるものと結論づけました。
 しかしこれは「ICTやソーシャルメディアと適度な距離を置こう」といった啓発のために発表されたものではありません。恐ろしいことに、マーケティング戦略向けのプロモーションに使用されたデータなのです。要するに、「現代人は集中力がないので、ネット広告は10秒以内でつくりましょう」と企業などに指南しているわけです。まったく「不都合な真実」と言わざるを得ません。
 気が散って集中力がなくなると、ひとつのことにじっくり取り組む忍耐力がなくなります。その結果、学校の授業や人の話をじっと聞いていられないといった行動があらわれます。


<「倍速で動画を見る人」は等速で見るだけの集中力がない>

 最近は、時間の節約と称して動画の倍速視聴をされる方もいるようですが、じつはこれも集中力が衰えているサインです。
 「等速ではダラダラして見ていられない」「倍速のほうが集中できる」という人は、倍速にしないと集中できないほど、集中力が落ちていると思ってください。
 心理学的にみると、動画を倍速で見るという行為自体には大きな問題は起こりません。ただし、見たコンテンツはほぼ記憶に残らず、倍速で見るくらいなら見ないで別のことをしたほうがましです。要は、時間の節約ではなく、時間の無駄です。
 新型コロナウイルス感染症の流行以降、大学でもビデオ講義が増えました。それを倍速で見ている学生もいると聞くと、やるせない気持ちになります。それで「効率よく勉強している」とでも思っているのでしょうか?
 また、最近は「本の要約動画」なども流行っているようですね。しかし、本を読まずに、要約した動画を見るなんてことも、胸を張って言わないほうがいいでしょう。「活字を読むのがつらい。でも動画やテレビなら見られる」って、それは2歳、3歳の幼児と同じということですよ。
( 川島 隆太(かわしま・りゅうた) 東北大学加齢医学研究所教授)

https://president.jp/articles/-/69035

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 上記の記事が事実であるとすれば、スマホを持つ人は十分注意する必要があります。確かにバスや電車の中でスマホをいじる人の多さに驚かされます。また歩きスマホなど注意散漫で歩く人も散見されます。スマホは便利な道具ですが、老若男女に関わらず心を完全に占領されるような害悪もあります。それを認識してスマホを利用したいものです。えっ、私ですか?私はまだガラケーです(笑)!

2023年05月14日