#599 事実は小説よりも奇なり

 早くも八月になりました。関東地方では現在台風8号の影響により大雨や強風が吹いていますが、この雨は東北地方の農家の方々にとって救いの雨となるでしょうか。九州地方では相変わらず毎日猛暑が続いています。一方、隣国の中国ではまれにみる洪水で北京を始めとする多くの都市が水に浸かっている状況です。日本は渇水、中国は洪水で極端な気象状況が続いています。人間社会と同様に自然界もおかしくなっています。
 さて、「事実は小説よりも奇(き)なり」という言葉をご存じでしょうか。イギリスの詩人バイロンのことばで、「実生活で起こる事柄は巧みに仕込まれた小説よりも不思議で面白いものだ。」を意味します。確かに実生活では様々な分野で想定外の出来事が発生します。例えば無差別殺人事件などは最たるものです。犠牲になられた被害者の方には心よりお悔やみの言葉を向けるしかありません。
 また不条理に発生する事件もあります。例えば最近では客が自分で精算するオートレジを導入するスーパーマーケットが増えてきましたが、そこで新たな万引きが発生しています。その方法とはオートレジで商品をスキャンするときに商品を二重に重ねて、あたかも1つしか買わないような仕草をするそうです。あるいはバーコードを手で隠してスキャンをのがれる万引きもいるそうです。
 それに対して、スーパーマーケット側は清算する場所に監視カメラを設置して、買い物客の動作を確認し、万引きが発生したときに即座に客に詰問する体制を取っているそうです。この万引きはマイバッグ導入から増えていますが、現代の日本人の貧しい品性の特徴を如実に示しています。換言すれば日本人の品格の低下を表しています。
 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の著作「心」の中に、明治時代には「罪を憎んで人を憎まず」を描いた「停車場にて」という作品があります。仁義(人が守るべき道徳)が通用した時代の物語です。無料で読める「青空文庫」にその作品がありますので、興味のある方は一読を勧めます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/files/50314_35074.html
 小泉八雲に限らず、多くの海外の著名人が日本にあこがれた理由の一つは、当時の西洋人にはない日本の貧しいながらも屈託のない一般庶民の晴れ晴れとした日常生活だと言われています。もちろん当時も多くの泥棒やひったくりがいたでしょうが、あくまでも仁義にのっとり行動していたようです。しかし最近の事件を見ていますと、親族殺人や怨恨によるバラバラ殺人、オレオレ詐欺を始めとする特殊詐欺の隆盛など、ひと昔前では考えられない犯罪が多発しています。以前であれば生活苦を理由に犯罪に手を染めることがありましたが、最近の犯罪は犯罪のための犯罪を犯す傾向が見られます。無差別殺人事件がその最たるものです。
 私達一般市民は上記に述べた不合理な犯罪から身を守るために様々な工夫をしていかなければなりません。まず、外出の際や就寝の際の家の戸締り、玄関の防犯カメラの設置など考えられる対策を取る必要があります。特に防犯カメラは犯罪が発生したときにすごく役に立ちます。先日伊万里市で発生したベトナム人による殺人事件では防犯カメラに犯人の顔が写っていたことが逮捕のきっかけとなっています。ただし防犯カメラを破壊して犯行に及ぶ悪人もいますので、複数の防犯カメラが必要なこともあります。全く世知辛い世の中になったものです。最近は考えもつかないような犯罪が多発していますので、本当に「事実は小説よりも奇なり」と言えるでしょう。地震などの自然災害にも日頃より対策を取る必要がありますが、様々な犯罪に対する防御も考えなけらばならない時代となりました。「くわばら、くわばら」です!

2025年08月02日