#561 教員の残業
アメリカ大統領選挙はトランプ氏の圧勝に終わりました。NHKや大半の民放は事前の報道特集番組でハリス氏を押していましたが、皮肉な結果となりました。ただ木村太郎氏はトランプの勝利を確信していました。彼はアメリカ社会の現状に詳しく、様々な情報を分析した結果、確信を得たようです。他の多くの評論家はアメリカの反トランプ支持のメディアの情報を鵜吞みにして選挙結果を予想したようです。つまり一方的に偏った情報を判断材料にしましたので誤った分析をしたことになります。かえってポリマーケットなど選挙を賭けにするサイトが今回の選挙の勝敗をみごとに予想したのはマスメディアに対する皮肉です。
今回の大統領選挙ではトランプの戦略勝ちというよりも、ハリスの一人負けの印象があります。敗因としては4年間の副大統領時代に顕著な政策をしなかったこと。討論をできないほど自分の意見を持っていいないこと。一例として候補者は演説でプロッターという原稿を映し出す装置を使用しますが、この装置が壊れた時にハリスが言葉を失い、30秒ほど同じ文言を繰り返したことがニュースで挙げられています。またバイデン大統領時代に物価高や社会不安が増加し、民主党に対し信頼を失くしたことも敗因として挙げられています。
とにかく今後4年間はトランプ政権が続きます。この政権に対してどのような国策が考えられるか、各国の首脳は頭を抱えていることでしょう。今回の大統領選挙に対して詳細に説明しているページがありますので、興味のある方は一読なさってください。
https://gendai.media/articles/-/137301
さて、前置きが長くなりましたが、今回のブログテーマは「教員の残業」です。公立、私立を問わず、教員の残業時間が以前から問題とされてきました。民間企業ではサービス残業を除いて、何らかの残業手当が出ますが、教員は残業しても手当は出ません。「教職調整額」という名目で若干の手当てが出ますが、残業手当ではありません。そんな折、公立校教員への残業代支給に関するニュースが報じられました。以下の記事が関連するニュースです。
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〈教員の残業〉
「働いた対価が得られないなんて意味不明」「まじめな教師ほど病む」
“教職調整額見直し”報道に現役教師たちが吐露するもっと深刻な問題
11月3日夜に共同通信により報じられた、公立校教員の残業代支給に関するニュース。現在は、残業代の代わりに一定額を給与に上乗せ支給する「教職調整額」という制度が採用されているが、処遇改善のために残業時間に応じた手当を支払う仕組みを導入する案が政府内で浮上し、関係省庁がこれを検討したというのだ。このニュースを現役教員たちはどう見たか。
<阿部文科相は報道を否定「教職調整額の廃止は考えていない」>
公立校教員らへの給与問題はこれまでにも紆余曲折があった。そもそも、残業代の代わりに給与に一定額を上乗せする支給制度「教職調整額」は昭和47年1月より実施されているもので、現在も基本給の4%が支払われている。
その後、長時間労働の常態化による教員のなり手不足の改善策として、文部科学省は令和8年1月から現在の3倍以上の13%に引き上げる方針を固め、予算を要求しているところだ。これが実現すれば、公立小教員の基本月給の平均(32万2300円)で月額約3万円の支給増となる。今回の共同通信の残業代支給に関する報道では、この「教職調整額」を廃止し、勤務時間をきちんと反映した賃金体系へと変える抜本的な制度転換だとされていた。
しかし11月5日、教育ニュースメディア「教育新聞」が、この報道を真っ向から否定。 同サイトでは、11月5日の閣議後会見で阿部俊子文科相が「教職調整額の廃止は考えていない。」と述べ、さらに「政府内で、いわゆる時間外勤務手当の部分の検討が行われているということは承知していない。」と否定したと報じている。
<生徒が帰ったあとにする仕事は無数にある>
教師にとっては「教職調整額」の引き上げが望ましいのか? それとも「残業代支給」が望ましいのか? そもそも教師たちは残業時間にどんな仕事をしているのか?
揺れる報道を前にする教師たちの意見を聞いた。兵庫県公立小学校の30代の男性教諭は言う。
「出勤時間はその教師により違うと思いますが、私は基本朝7時すぎには学校にいます。勤務時間は表向きは8時から17時の9時間拘束になっていますが、17時に帰れる日はほとんどありません。
残業してどんな仕事をしているかは、学校によって微妙に違いますが、私は事務的な仕事や保護者連絡、テストの作成や採点などをしています。まれに保護者対応で21時半くらいまで学校に残ることもあります。
また小学校の場合は運動会シーズンが非常に忙しく、休日や早朝に出勤することを求められるケースが多いです。教職調整額の引き上げや残業代支給よりも、そもそもの業務を減らしてほしいとは思います」
この意見に大きくうなずくのは、神奈川県公立高校に勤務する30代女性教諭だ。「いつも残業して、部活や授業の準備、授業で集めたプリントのチェック、行事の準備、高3の担任だと大学入試の推薦書の作成もします。
とにかく最初から業務量が多すぎて、定時には終わらない。あとは、どの程度まで仕上げるかによります。授業準備は時間をかけようと思えば無限にできるからです。だからこそまじめな教師ほど病むのです。ときどき定時で帰る先生もいますが、そういう方も家で何か作業している場合が多いです」
また、この女性教諭が勤める学校では、19時半になると学校から閉め出されてしまうという。「うちの学校だけなのかもしれませんが、19時30分になると強制的に職員室から全員追い出されます。そうなると自宅に仕事を持ち帰るしかない。『校務分掌』といって、学校を運営するために教員が分担して行なう仕事があり、この割り当てられた仕事を偏らないように分配するはずなのですが、若くて仕事ができる教師に偏ることが多い。
以前、本当は24時前には就寝したいところが深夜2時までかかり、朝6時起床で睡眠時間4時間というのが1ヶ月近く続いたときは辛かったです」
また、東京都公立中学校に勤める30代女性教諭もうなだれる。「テストの採点や授業準備、会議の資料作成など、生徒が帰ったあとにする仕事は無数にあるので、とてもじゃないけど残業しないと間に合いません。新任の頃は定期テストの作成が間に合わず、23時くらいまで学校に残ったこともありました」
<「調整額が増えたところで仕事の負担は減らない」>
この30代女性教諭は、「教職調整額」が引き上げられようと「残業代」が支払われようと、問題解決にはならないと言う。「どんな給料形態になろうと教員の仕事量が減るわけではないので、根本的な問題解決にはつながらないように思えます。仮に残業代支給の案が実現したところで、管理職から『残業するな』と圧がかかり、家に仕事を持ち帰ることになっては意味がないので、業務内容が改善されることを求めます」
さらに、仮に残業代支給が実現したとしても、次のような点に留意してほしいと言う。「教員の中には、仕事が極端に遅い人や明らかに何も用事がないのに遅くまで学校に残っている人もいます。残業規定がどのような内容になるかが重要だと思います。
『教員は残業するのが当たり前』という風潮があるので、もし政府が残業代支払いを本当に検討してくれているのなら、大きな一歩だと思います。残業代が出ないことは、教員のなり手不足の大きな原因のひとつだからです。現状、残業代が出ないのをいいことに、際限なく仕事が振られているように感じます」
最後に、東京都公立小学校の男性教諭のこんな言葉も印象的だった。「多くの教員が、もうあきらめムードです。調整額が増えたところで負担は減らないからです。教育学部に通う学生たちからも“働いた分の対価が得られないなんて意味不明だ”という声をよく聞きます。本来であれば残業代支給が好ましいとは思います。でも、おそらく阿部俊子文科相が否定しているのなら、残業代支給の策が実現することはないのでしょう。それであれば現場の人手を増やし、教師一人一人の業務量を減らしてほしい」
男性教諭は「時代に合った教育内容がかなり組み込まれ、教える範囲と業務量が莫大に増えた。国は一刻も早く、教師の給料形態よりも業務環境の現状見直しに重点を置いてほしい」と願う。
https://shueisha.online/articles/-/252107?page=1
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上記の教員の意見にありますように、残業代をもらえるよりも、すべて学校でクラス担任・副担任制を実施し、仕事の軽減を実施することが一番です。しかし、昨今では教師になる学生が減少しています。少しでも優秀な教員を確保する手段として、「民間企業よりも初任給を良くすること」、「賃金体系を良くすること」が挙げられますが、金銭面の改善だけではありません。実態に応じた教員の働き方改革が必要です。
「教育は国家百年の計」と言われます。国の将来を決めるのは教育です。OECD加盟国の中で日本は教育にかける費用が最低です。明治時代には富国強兵のために優秀な講師を海外から招聘し、優秀な教員を育成し、優秀な生徒・国民を育てました。時代背景は異なりますが、日本の国力が低下している現状で、国力を取り戻すには優秀な国民を育てる必要があります。そのためには優秀な教員の確保が絶対必要です。この点を今の政治家は理解していません。目の前の短期的な利益に追われ、長期的に国家を運営する視点に欠けています。実に嘆かわしいことです。