#205 寺社、団体外国人に困惑

 昨今は世界的に日本ブームで、多くの外国人が日本を訪れています。日本政府も観光業に力を入れており、2020年の東京オリンピックに向けて大々的に観光としての日本を世界に売り込んでいます。多くの外国人が日本を訪れ、この国の歴史や文化、日本人の生活を理解するのは文化交流という点からも、外交の面でもこの国の利益になることであり、親日の外国人を増やすことで武力よりもはるかに効果があります。
 しかし、文化交流はあくまでも出会った人々が礼節をわきまえ、様々な親善活動を行うことで、お互いを理解し、それによって実り豊かな国交が行われます。自分の文化や習慣を他者に押し付けるだけでは文化交流にはなりません。その一例として、次のような出来事が昨日の西日本新聞の一面に載りましたのでご紹介します。
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『寺社、団体外国人に困惑 南蔵院、個人以外お断り 境内で大音量音楽、屋根に上って写真』
(西日本新聞 2018年11月10日)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/464466/

 巨大なブロンズ製釈迦涅槃(しゃかねはん)像で知られる福岡県篠栗町の南蔵院が、観光で訪れた外国人団体客のマナー悪化を理由に受け入れを停止している。大音量で踊りながら境内の動画を撮るなど「集団になると風紀を乱す行為が目立つ」という。ただし、外国人を全面的に拒否する意図はないとして個人客は断らない方針。マナー違反に苦慮する宗教施設は他にもあり、国が外国人観光客受け入れに力を入れる中、文化の違いからくる摩擦にどう対処するか関係者は頭を悩ませている。
 南蔵院は、「ねぼとけさん」の愛称で親しまれる全長41メートル、高さ11メートルのユニークな釈迦涅槃像がインターネットで話題になり、毎年多くの外国人客が訪れる。
 南蔵院が停止措置を決めたのは約1年前。林覚乗住職によると、数年前から外国人団体客が増え始め、中には境内で大音量の音楽を鳴らして踊りながら動画を撮ったり、寺院の屋根に上って写真を撮影したり、水子地蔵の前で記念撮影するなどの行為も目立つようになった。注意をすると聞く人もいるが、「なぜ怒られるのか」と耳を貸さない人もいるという。
 林住職は「集団心理なのか団体の方がマナーが悪い。外国人を排除しているつもりはなく、祈りの場の雰囲気を壊す人は日本人でも退去してもらっている」と説明する。個人客には12カ国語による注意書きでマナー厳守を呼び掛けている。
 南蔵院はバスツアーを主催する旅行会社などに受け入れ停止の方針を通知しているほか、県や篠栗町などにネットの観光サイトから同院の情報を削除するよう要請。町は「人気のある南蔵院の情報を発信できないのは痛い」とこぼす。
 九州の他の地域でも同様のケースが起きている。熊本県八代市の八代宮では、クルーズ船で大勢訪れる外国人客によるたばこのポイ捨てやごみの放置などが増えたため、昨年8月から約2カ月間、船が寄港する日に合わせ施設を閉鎖。その後、市が警備員を配置するなどの対策に乗り出し、事態収拾を図ったという。
 一方、年間約1千万人の参拝客が訪れる太宰府天満宮(福岡県太宰府市)もトイレを汚すなどの行為に悩まされているが、「受け入れ拒否まではさすがにできない」として特別な措置は取ってないという。
 観光庁は、観光地での外国人客によるトラブルが増加傾向にあるとして実態調査を進めている。「南蔵院のようなケースが増えるようであれば、持続可能な観光推進はできない。調査を急ぎたい」(同庁外客受入参事官室)としている。
 南蔵院の林住職は「国は4千万人もの訪日外国人客の受け入れを目標に掲げているが、現場の苦悩にも目を向けてほしい」と話している。
■日本でのマナー 根気よく説明を
 九州大大学院比較社会文化研究院の松永典子教授(多文化共生教育論)の話 南蔵院の外国人客の受け入れ停止は、そうせざるを得ないほどひどい状況だったということだろう。ただ、文化の違いから起こりうることでもあり、日本で求められるマナーについて根気よく説明する必要がある。国も外国人観光客増加による観光振興を掲げる以上、大々的に相互理解を促すキャンペーンを展開すべきだ。そうすることで外国人客の理解を助け、マナーを巡る衝突回避につながると思う。
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 上記の記事は極端な例と思いますが、心無い外国人観光客による無謀と思える事件が日本国内で多発しています。「郷に入っては郷に従え」と言いますが、海外旅行をする際にはまず観光先の事情を入手しなければなりません。次に訪問先の歴史や文化を尊重し、人々のしきたりに従う必要があります。このことを無視すると必ず現地でのトラブルに巻き込まれます。特に団体旅行では羽目を外し、大騒ぎして現地の人達からひんしゅくを買います。
 これは日本人が海外旅行を解禁された1960年代にも起こりました。その時の生まれた日本人のイメージが、「眼鏡をかけて首からカメラを提げた日本人」です。当時団体旅行が主流だった日本人が世界中から、特に欧米から日本人のなりふり構わぬ行動を非難されたことがあります。さすがに当時から50年が経過し、海外旅行を楽しむ日本人はマナーが素晴らしい、と称賛されていますが、そのような時代があったことを決して忘れてはなりません。
 同様にこの国に観光に来る外国人も日本のしきたりを守る必要があります。自分の行動規範をそのまま訪問先に持ち込んではならないのです。あくまでも訪問地の風習やしきたりに従い、その範囲内で大いに観光を満喫することができます。このことを知らしめさせるのは個人ではなく、国の仕事です。日本政府観光局を始めとする外務省や法務省等が手を組み海外の観光客に周知徹底させる必要があります。外国人も日本人もお互いを理解し、文化交流を深めてもらいたいものです。

2018年11月11日