#202 老子の遺言(1)

生きる意味とは何なのか?よくそんな質問をされますが、答えは実に簡単です。
すべては他(ひと)のため、自分のためではありません。
人は他の役に立つことを目的に生まれたのです。
自信を持ってください。あなたはきっと誰かのために役に立ちます。

---------------------------

 上記の言葉は2009年に101歳で遷化された臨済宗の僧侶、松原泰道氏の言葉です。氏が日本人への遺言として著された「つまずくことが多い人ほど、大きなものを掴んで成功している」の冒頭の一節です。次に以下のような文言が続きます。
---------------------------
 「私は何のために生まれてきたのだろう?」「生きる意味とは?」。これは誰もが一度は心に問いかける大命題ではないでしょうか。しかし、この問題についての私の答えはいつもはっきりしています。
 生きる目的とは他(ひと)の役に立つことです。人間はそのために生まれたのです。自分のためではありません。なかには自分の人生は自分のものとおっしゃる方がいるでしょう。もちろんそれはその通り。ですから自分の人生を通して、いかに他のお役に立つかを考えればいい。なぜならあなたはひとりで生きていくことはできません。他との縁があってはじめて人生を育むことができるのです。
 追々お話ししますが、他のためとは自分のためであることと別物ではありません。他のために何かをするということは、翻って自分のためになるのです。そんな人生観を築くことができたら生きる意味や、やり甲斐を得ることができる。そしてそこに、喜びを見出すことができれば人生はより豊かになるでしょう。
 なに、大丈夫ですよ。あなたは必ず他の役に立つことができる。自信を持って前を向いて、進んでいってください。
----------------------------
 松原泰道老子の書物は私が若い頃から読み親しんできたものですが、大往生を遂げられる直前まで多くの著書を世に出されました。本日引用しているものは2013年にマガジンハウスより出版され遺作となったものです。仏教関係の著述を通して絶えず私たち日本人に問いかけて来られた偉大な老子のお一人です。一読していただきたい著者の一人です。本書にちりばめられている言葉を最後に引用します。

・「人」はもたれ合いを意味する象形文字。「間」には巡り合いという意味がある。そう考えると、人間の在り方ははっきりとしています。
・ひとりで生きていくことは、誰にもできません。
・長い人生で気がついたのは、つまずくことが多い人ほど大きなものをつかんで成功しているということ。
・人生の中で起きた不幸な出来事は、どこから送られてきたかはわかりませんが、受取人は確実にあなただということです。受け取ったものをどう展開するか、そこはお手並み拝見というところ。
・人に救いを求めてばかりいたら、いつまでたっても幸せにならない。
・読書をしないということは考えることをしないに等しい。本の中には先人の知恵、苦労した人の考え方、何でもかかれています。参考にしない手はありません。
・解決した人生などありません。私自身101歳になった今でもどう生きて行こうか、毎日自問自答しています。
・この世に不変なものはひとつもない。もちろん、変わらぬ愛などありはしない。
・感動できなくなったら、人間は終わり。進歩しません。

2018年10月21日