#396 夏休み子ども科学電話相談

 今年の夏は東京オリンピックやパラオリンピックの中継で通常の番組が大幅に変更になりましたが、毎年夏休みに楽しみにしているラジオ番組があります。大人も聴いてためになるNHKラジオの「夏休み子ども科学電話相談」です。例年でしたら夏休み中午前8時から2時間ほど放送しており、子供からの様々な質問に専門家が答える形式で番組が進みます。その中には大人でも首をかしげるような難問があり、思わずうなってしまいます。大人にとって当たり前のことだと思っていたものが、子どもの視点で考えますと今まで信じていたものが崩壊していきます。そのような質問を一冊の本にして現在出版されています。書名は文字通り『大人もおどろく「夏休み子ども科学電話相談」』(SB Creative サイエンス・アイ新書)です。本日はその中の極めつけの質問と回答を転載します。
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『カガミに映ると反対になるのはどうして?』
(質問者:5歳)
「なぜ、カガミに映ると右左が反対になるのですか?」
(司会)
「ああ、よくありますね。これ、わからないですね」
(回答者)
「カガミに映ったものというのは、右と左が反対になるのではないんですよ。ちょっと難しいですが、前と後ろが反対になるんですね」
(質問者)
「はい……」
(回答者)
「今、カガミはありますか?すぐそばになければ、あとでいいんですけれど、カガミを見てくださいね」
(質問者)
「はい」
(回答者)
「そうすると、カガミの中の……あなたは、どっちを向いているか、ということなんです」
「カガミの中のあなたが、本物のあなたと同じ向きを向いているなら、頭の後ろとか背中が見えるはずですよね」
「でも、実際には顔とか胸が見えるでしょう?ということは、カガミの中のあなたは、本物のあなたと反対方向を向いているんですよ。前と後ろが反対になっているんです。」
「これ、実はすごく難しい問題なんですけれど……。右と左は逆さになってないんですね。前と後ろが逆さなんです。」
----- 他の先生方のため息と感嘆の声が-----
(回答者)
「どうでしょう……。大人でも右と左が逆さまだと思っている人が多いんですけれど……」
(司会者)
「いいですか?」
(質問者)
「はい」
(司会)
「司会のおじさんも、よくわからないんです」
(回答者)
「これを、右と左って感じてしまうのは、人間の体の形が右と左で同じようになってるからなんですね。だから右と左が逆さまと思うんですけれど、カガミで逆さまになるんだったら、上と下も逆さまになるはずなんです」
「でも、上と下は逆さまにならないですよね。難しい言い方ですけど、右と左が反対だと思うのは『錯覚』なんです」
(質問者)
「はい」
(回答者)
「右と左が逆さまに感じるけれど、本当はそうじゃない」
(質問者)
「えええー」
(司会者)
「へえ……。前と後ろが逆さまだと思ってくださいね」
(質問者)
「は……い」
-----その後-----
(司会者)
「いやあ、むずかしいです」
(回答者)
「そうですね。これはすごく難しくて、大人になって大学で、哲学とか物理学という学問で、初めてはっきりわかる問題なんですね。でも、この問題に5歳で気づいたのはすごいですね。」
(司会)
「カガミに向かって右手を上げますよね。そうするとカガミの中では左手を上げたようにみえますよね……。」
(回答者)
「そう感じてしまうんですけれども、右手なんです。」
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 読者の皆様はお分かりになりましたでしょうか。私は何度読み直しても、よく理屈が分かりません。凸レンズを通した像は光の屈折の関係で上下左右が反対になりますので分かりやすいですが、カガミの中で前と後ろが反対になる……?右と左が逆になっていると考えた方が理屈に合うような気がしますが……?とても不思議です。皆様の考えはいかがでしょうか。

2021年09月12日