#550 遺伝子ドライブ

 今日は9月1日、暦の上では秋の始まりです。また関東大震災が発生した日でもあります。地震対策は現在かなり進んでいますが、地震はいつ発生するか分かりません。日頃からの準備が大切です。一方台風は進路がある程度推測され、進路コースが分かりますので、接近するまでに避難準備が整います。しかし今回の台風10号については従来の予測が全く当てはまらずに、不可思議な動きをしています。現在近畿地方の沖合で停滞していますが、今日の午後北上し、岐阜県辺りで熱帯低気圧に変わると予報されています。この台風の影響で筑後地方の小中高等学校は木・金曜日の2日間臨時休校となりました。
 台風10号は伊勢湾台風並みの気圧で鹿児島近くに一度上陸し、玉名市付近に上陸し九州を横断しました。ここ大牟田ではそれほど強い風は吹きませんでしたが、250mmを超える雨が降りました。今回特に凄まじかったのは台風の外縁部に当たった鹿児島や宮崎です。竜巻も発生して多くの車や家屋が被害を受けています。また静岡や関東地区も大雨の被害を受け、河川の氾濫を引き起こしています。また専門家の意見では、このような台風が今後増えてくると推測しています。
 さて、ブログ#548の続きになりますが、「遺伝子ドライブ」の技術を用いてマラリア撲滅を考えている人物がいます。ビル・ゲイツです。この「遺伝子ドライブ」に関しては様々な意見がありますが、意見の1つとして次の記事を紹介します。
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『遺伝子書き換えてマラリア撲滅 ビル・ゲイツも推す技術は諸刃の剣』
<「遺伝子ドライブ」の希望と危うさ>
 マラリア、デング熱、そしてジカ熱。蚊が媒介する感染症を、ゲノム編集技術を用いて根絶させる研究に取り組んでいる。そう聞いて訪れたカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究室で、昆虫学者のオマー・アクバリは説明を終えると立ち上がって、私を促した。「じゃあ秘密の部屋をみにいこうか」
 廊下をはさんだ実験室の一隅、二重の密閉扉の先にあるのは、ネッタイシマカの飼育室。内側を白いガーゼでくるんだプラスチックの飼育箱が200余り。「さっき話したのは、この蚊だよ」と、アクバリはある飼育箱をとりあげた。「ほら、ほかの蚊より白っぽいだろ」。ゲノム編集で表皮の色素が薄くなるよう遺伝子を組み換えたのだという。
 クリスパー・キャス9活用のノウハウを磨きながら研究室がめざすのは、特定の遺伝形質が集団全体へとすばやく広がる「遺伝子ドライブ」技術の開発だ。通常はゲノム編集のハサミにつかうキャス9自身を、書き換える遺伝子に一緒に組み込もうというもので、もともと、マサチューセッツ工科大メディアラボにいるケビン・エスベルトが最初に思いついたアイデアだった。
 組み込まれたキャス9は、まず交配するたびに相手方の遺伝子も自動的に書き換えようとする。「つまり、子孫はみなキャス9入りの蚊の遺伝形質をもつようになる」とアクバリはいう。「ネッタイシマカは、デング熱を媒介しないように遺伝子を改変できる。その技術と遺伝子ドライブを組み合わせれば、デング熱をなくせると思っているんだ」
<ネズミをすべてオスにする>
 この遺伝子ドライブは、ほかの応用も考えられている。絶滅の危機にある固有種の保存への活用を検討しているのは、ガラパゴス諸島など、世界各地の60近い島で固有種の保存にとりくむNPO、アイランド・コンサベーションだ。
 狙いはネズミなど外来種の駆除にある。「固有種の86%が外来種による脅威にさらされている。その駆除に遺伝子ドライブが使えると考えている」と、米国サンタクルーズにある本部で、広報担当のヒース・パッカードは説明する。「環境保護団体は、遺伝子組み換え技術に否定的なところがたしかに多いね」と、パッカードはいう。「でも、外来種を排除しないかぎり、生物の多様性は維持できないところまできているのも事実だ」
 たとえばネズミの駆除の場合、従来は殺鼠剤の入ったエサをヘリコプターから大量投下して一斉駆除を試みる。「しかし、駆除が望める範囲も、かける費用も限りがある」。そこで検討をはじめたのが、遺伝子ドライブですべてのネズミをオス化させること。メスが生まれなくなったネズミは、子孫を残せなくなる。クリスパー・キャス9とオス化遺伝子とをセットにして組み込む手法などが俎上にのせられ、提携する大学や研究機関が、研究に取り組んでいる。
 ただし、オス化による駆除は、島内限りとはいえ、外来種という「固有種」を絶滅させる力を遺伝子ドライブが備えていることのあかしでもある。もしオス化したネズミが島外に逃げ出したら、どうなるか。遺伝子ドライブ技術でマラリアを根絶する代わりに、高致死率のウイルスや病原体が組み込まれたら、危険な生物兵器とならないか。
 米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は17年7月「セーフジーンズ(安全な遺伝子)」プログラムを立ち上げ、遺伝子ドライブの開発をするオマー・アクバリの研究室など七つの研究機関への資金拠出をきめた。危険な遺伝子が組み込まれたとき、その無効化ができること。遺伝子ドライブが想定外の事態を招いたとき、いつでも中断できるようにすること。そんな技術の開発が目的だ。
 今年4月、米マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツは、「善意のゲノム編集」と題したコラムを寄稿し、かねて支援してきた遺伝子ドライブによるマラリア撲滅の実現が、リスクの過大評価のために足踏みすることのないよう訴えた。
 一方、クリスパー・キャス9による遺伝子ドライブの可能性を最初に示したケビン・エスベルトは、論文の発表後は、悪意やミスで思いもかけない結果が生じるリスクに、技術者たちが最大限の注意を払うよう強調するようになった。
 「僕自身、この技術は、とても素晴らしいと思っているよ」とエスベルトはいう。「でも、何かが起こったとたん、すべてが台無しになる。そのことをみな肝に銘じるべきなんだ」
https://globe.asahi.com/article/11651583

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 上記は2018年の記事ですので、さらに遺伝子ドライブの技術が進んでいると思われます。いわゆる遺伝子組み換え技術ですが、人類はすごい技術を手にしました。しかし果たして安全に利用できるものでしょうか。換言すれば、この技術は「神の領域」に踏み込むことを意味します。想像できないほどの長い時間の流れに沿って遺伝子を変化させ、生物が進化したわけですが、人間の欲で遺伝子を故意に組み換え、新しい生物を誕生させることが倫理的に可能でしょうか。フランケンシュタインのような怪物を生み出すことになりかねません。実際、人間の遺伝子を組み替えてデザイナー・ベイビーを誕生させる計画もあるようです。
 人間の浅知恵では計り知れない生命の神秘があります。それを科学的な興味のために命を何でも組み替えることに恐怖を覚えます。
 ついでに、新コロナウィルスワクチンも遺伝子組み換えによるものですが、治験もせずに世界的に実施され、その効果や結果はまだ未知数です。数年後にこのワクチンが有効かどうか、私たちは知ることになるでしょう。


追記:遺伝子ドライブ(ウィキペディアより)
 遺伝子ドライブ(英: gene drive)とは、特定の遺伝子が偏って遺伝する現象である。この現象が発生すると、その個体群において特定の遺伝子の保有率が増大する。
 人為的に遺伝子ドライブを発生させることにより、遺伝子を追加、破壊、または改変し、個体群、または生物種全体を改変することができると考えられている]。具体的な応用例として、病原体を運搬する昆虫(特にマラリア、デング熱、ジカ熱を媒介する蚊)の拡散防止、外来種の制御、除草剤や農薬抵抗性の除去がある]。しかし、改変された生物を自然環境に放つ行為は、生命倫理上の懸念がある。ただし、有性生殖を行う種でのみ機能するため、ウイルスや細菌においては発生しない。

2024年09月01日