#99 兵どもが夢の跡

 今日は三池炭鉱が閉山して20年目の日です。地元のNHKなどのニュースで取り上げていました。平日は三川鉱内に入れないのですが、本日は特別に開放する旨を聞きましたので、午後行ってみました。坑口と関連する施設が残っているだけで何も残っていません。炭鉱の施設や工場があった場所は一面ただ空き地になっています。(写真をご覧ください。遠くに見える社屋が坑口です。写真はブログタイトル「ひつじの独り言」をクリックするとご覧いただけます。)子供の頃は構内に入ることができず、外から炭鉱施設を見るだけでした。小学校の3年生の頃に図工の時間で施設を写生に出かけたことがあります。
 あれだけの活気が溢れていた場所が今は何も残っていません。炭鉱遺産として当時走っていた炭鉱電車が3台置いてあり、坑口はコンクリートで塞がれ、構内に炭鉱夫を連れて行った車両が錆びたまま置き去りにされています。松尾芭蕉が奥の細道の旅の途中、平泉(今の岩手県平泉町)で詠んだ句、「夏草や兵どもが夢の跡」をふと思い出しました。あれだけ栄えていた三池炭鉱が閉山し、それに伴いこの街も寂れていきます。子供の頃賑やかだった街を覚えている私にとって、今日目にした炭鉱跡はまさに「兵達が夢のあと…」です。
 このことは三池炭鉱だけに当てはまるものではありません。企業や国も無関係でないのです。大企業だからといって決して社員に安定した場所ではありません。山一証券然り、銀行の再編然り、最近ではシャープや東芝がそうです。かじ取りを誤れば企業の大小にかかわらず必ず訪れる結果です。国家にも当然当てはまります。世界地図を広げてみると紛争地域では絶えず国が変わっています。一見安定しているように見えるヨーロッパの国々も数百年単位で見ると、絶えず国が変わっています。フランスはかつてのフランク王国、ドイツはかつてのプロシアなど何一つ無常でないものはありません。石油で潤っているサウジアラビアも将来の石油枯渇を案じて日本や中国との経済協力を要請するために訪問しました。彼らも将来を危惧しているのです。
 話を戻しますと、特定の産業に依存している企業や団体、地域社会は、関連する産業が無くなれば第二の夕張や大牟田になります。つねに先のことを考え、行動する必要があります。国家もそうです。特に日本は資源のない国なので、常に国の将来を考え行動しなければなりません。そのために必要なのが国民の教育です。教育を通して有能な人材を育て、活用することが必要です。日本が将来も生き残る唯一の手段です。

2017年03月30日