#510 ブラックジャックとAI
11月も最終週となり今週末は12月になります。「歳月人を待たず」といいますが、今年も残り1月余りとなります。師走になれば大掃除や年賀状の作成など、年末までにしなければならないことで忙殺されます。できるだけ出来るところから始めたいものです。
ところで、最近の話題に故手塚治虫氏の「ブラックジャック」がAIで蘇ったというニュースが流れていましたので、私もさっそく読んでみました。書店では週刊少年チャンピオン52号が売り切れていましたので、電子書籍kindleを通して読んでみました。今回のAI補助によるストーリーは次の通りです。
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ブラックジャックとピノコが知り合いの医者のサイボーグになっている娘を救おうとしますがうまくいきません。これまでの治療においてAIの助けを借りながら延命を繰り返してきましたが、今回は致命的な心臓の欠陥によりブラックジャックの治療がうまくいきません。またブラックジャックと同時に安楽死を推奨するキリコ医師も登場し、サイボーグの娘があやうく殺されそうになります。病気の原因を突き止めたブラックジャックはサイボーグの娘を危機から救い、ようやく命を蘇らせます。
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今回のブラックジャックのストーリーはAIによる作成が話題となっています。一見するとAIが作成したものと気づかずに物語を読んでしまいます。生前の手塚治虫氏が描いたものとほぼ同じ作画技術が楽しめます。しかし長男の手塚真市によるとAIによる様々な工夫を取り入れて今回の作品を登場させたようです。なおTBSの特集では次のような記事がありますので、その一部をお届けします。
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『AIで生まれた最新版「ブラック・ジャック」
賢くなるAIを人間はコントロールできるのか【報道1930】』
先日は50年以上前に解散したビートルズの新曲がリリースされたが、今度は漫画だ。没後34年を経てあの手塚治虫の新作が発表された。AIと人の共同作業によって完成した名作『ブラック・ジャック』40年ぶりの新作だ。完成した作品は手塚らしさが十分に感じ入られるものだった。手塚治虫の世界が蘇ることなどは喜ばしい限りだが、進歩はいつもいいことばかりではない。AIには危なさもある。
<40年ぶり“手塚治虫の”「ブラック・ジャック」ができるまで>
2023年7月。慶応大学の栗原聡教授の研究室には手塚治虫の息子でクリエーターの手塚眞さんや映画監督の林海象さん、脚本家の舘そらみさんらが集まっていた。栗原教授の研究室が何十時間もかけて手塚作品を読み込ませたAIを使って、それぞれのグループがブラック・ジャックの新作を作り上げる試みの始まりだ。まず人間が「ラブストーリー」「中東」「動物も出て来る」など、大まかなシチュエーションや条件をAIに指示すると、それに沿ったようなストーリーがすぐに画面に提示された。
今回はAIの主な役割はストーリーやキャラクターを担当し、その後人間が作画やコマ割りなどを行っていく。AIとやり取りをした舘さん。はAIとの会話の仕方によっては相手(AI)が勘違いをすることもあったという。
<脚本家 舘そらみさん>
「意外と暴走するな、というか、それこそこっちの聞き方ひとつですけど、『ああ、こう取られちゃったんだ』とか、そういう部分がかなり多いので、AIとのコミュニケーション能力を問われるみたいな感覚はすごくあります」
しかしキャラクター作成などにはコミュニケーション能力はいらないかもしれない。今回の漫画に登場する人物の作成には研究室の学生の写真をAIに読ませた。すると手塚治虫が描きそうな人物が瞬時に何種類も提示されたのだ。・・・・
<クリエーター 手塚眞さん>
「実際にAIと対峙してやり取りをしていく中で、何かAIにすごい親近感を感じてしまって、そこに個性があるかのように勘違いをしてしまう瞬間っていうのがありましたね」
今回、出来上がった新作ストーリーとして選ばれたのは映画監督の林海象さんがAIとやり取りしてできたものになった。詳しくは少年チャンピョンで確認してもらいたいが、確かに“手塚作品っぽい”ものになっている。しかし、クリエーターの手塚眞さんはAIの果てしない力は認めつつ、複雑な人間の感情の扱いは「まだ」人間の方が上だという感想を持ったという。
「感情ってすごく実は抽象的なもので、実はデータ化できないんですね。感情を表現した漫画の絵というものは学習できるんです。でもそれは学習に過ぎないから、その裏に込められている感情っていうのは、分析もできなければ解析もできないわけなんですよ。漫画にするときには演出で加えないといけない。演出はデータ化できないんですよ。ストーリーをどう演出するのか、というのは今のところ人間が考えないといけないところなんですね」・・・・
全文を読みたい方は、次のアドレスをクリックしてください。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/857201?display=1
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今回の作品はAIによるものだと言わなければ、故手塚治虫氏が残してくれた遺作の一つであると公言してもおかしくないくらいの出来栄えです。AIの進化と共に様々な分野で飛躍的な進歩が見られます。問題はAIに操られることなく、人類がAIの持つ可能性をいかに最大限に引き上げることができるかにかかっています。共存共栄はあくまでも私たちの良心の側にあります。