#451 絶版大国
季節は進み、もう10月になりました。この時期にいつも感じることですが、今年もあと3か月になりました。10月らしく日中は残暑が厳しい日が続きますが、朝晩はすっかり涼しくなっています。そろそろ衣替えをしても良い時期になりました。
さて、この数か月で国内外の要人、著名人が相次いで亡くなりました。安部元首相、ゴルバチョフ元書記長、エリザベス女王、そして落語の6代目円楽、プロレスのアントニオ猪木さんが先日亡くなりました。円楽さんは笑点の主要メンバーとして活躍しました。猪木さんはプロレスの大スターとして活躍しました。お二人に衷心よりお悔やみ申し上げます。
ところで、日本は活字大国と言えます。街の書店には多くの雑誌や本が並び、最近ではスーパーマーケットやコンビニの一角に書籍コーナーがあり、必要なものはある程度購入できます。ところが活字大国の日本では書籍に関して悲惨な結果が待っているのです。つまり扱われる書籍は数年たつとすぐに絶版になります。この現状を説明している記事を見つけましたので、一部転載します。
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『「絶版大国」と電子書籍』
以前から、日本は「絶版大国」だなと感じています。どういう意味かというと、出版された本がしばらくすると絶版、ないしは永遠の品切れになってしまって、なかなか入手できない国、という意味です。英語の本ならば20年前、30年前に出版された本でも、通販大手のアマゾンで新品を購入可能なことが多い一方、日本の本はすぐに絶版や品切れになってしまうと感じています。
東京・神田神保町の古書店街は絶版本・品切れ本も数多く取りそろえていて大好きな場所です。ぶらぶら歩いていて思わぬ本に出合うという楽しさがあります。ただ、求める1冊の本を探すとなると、砂漠に落としたコンタクトレンズを探すように、なかなか困難です。
<アマゾンにできた古本市場「マーケットプレイス」、しかし……>
近年、日本の「絶版大国」の状況が少し改善された動きがありました。アマゾンに「マーケットプレイス」ができたことです。ご存じの通り、マーケットプレイスとは、アマゾンの持つ通信販売プラットフォームを、中小の事業者にも開放するものです。全国の中小の古本屋さんがアマゾンのサイトで古本を売るようになりました。これによって、絶版や品切れになった本でも、自宅に居ながらにしてマーケットプレイスで検索して、全国のいろいろな古本店から、古本を手に入れることができるようになったのです。
これは一定の進歩でした。進歩なのですが、やはり「絶版大国」日本の現状は、それほど好転していないなと感じることがしばしばでした。なぜなら、マーケットプレイスで、とんでもない高値で売られている古本が多いからです。
<定価2800円の本が軒並み1万円以上!>
今年7月にある本を買おうと思いました。具体的な書名は控えますが、2004年5月に、定価「税別2800円」で出版された本です。アマゾンや色々なサイトで調べてみると、とうに「品切れ」になっていました。マーケットプレイスに出ている古本を見てみると、数冊ありましたが全部1万円以上の値がついています。どうしようかと数日迷った揚げ句に、やはりどうしても読みたくて、いちばん安いものを1万457円で購入しました。
もしも新品本が出版社から出ていたら、3080円(2800円+税)で買えた本なのに、傷んで状態の悪い古本を、定価の3倍の値段で購入せざるを得なかったわけで、やっぱり「絶版大国」の弊害は、いまだに残っているのです。買いたいのにマーケットプレイスで1万円以上、時には2万数千円の値がついていて、購入をあきらめた本がたくさんあります。マーケットプレイスの、あの古本の値付けは一体なんなのだ、と思います。
<「最後の希望」は電子書籍、紙で出版されていた古典も電子化?>
この「絶版大国」の弊害を一気に解決するのが、たぶん電子書籍だろうと、常日頃思っていました。電子書籍ならデータさえ失わなければ品切れにならず、いつまでも定価で購入できるからです。ただし、すでに一度、紙の書籍として過去に出版した本を、改めて電子書籍にして出版するというのは出版社としても難しそうなので、「絶版大国」の
終しゅう焉えん には、この先、何十年もかかるだろうな、と考えていました。これから電子書籍が普及して、20年、30年前に出版された本が電子書籍で手軽に手に入るという時代は、つまり20年、30年後にならないとやって来ないわけですから。
ところが、うれしいことに、そうではない可能性も出てきたのです。例を一つあげましょう。平凡社に「東洋文庫」があります。日本を含むアジア各国の古典、名著、基礎文献を集めた貴重なシリーズで、私も十数冊持っています。5年前に、東洋文庫の一冊「屍鬼二十五話 インド伝奇集」(ソーマデーヴァ著、上村勝彦訳)を、アマゾンのマーケットプレイスで古本として買いました。定価は2600円(税別)と本には表記されていましたが、その古本を4605円で購入しました。
「日本霊異記」そして最近、アマゾン・サイトで本を見ていて、ぎょっと驚きました。「日本霊異記」などなど東洋文庫の多くが、アマゾンのキンドル版、つまり電子書籍として売られていたからです。かつて購入した「屍鬼二十五話」の値段を調べてみると、キンドル版がなんと1540円でした。……
(https://www.yomiuri.co.jp/life/digilife/column/20220926-OYT1T50133/2/)
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個人的にはアマゾンなどで簡単に書籍を入手できるのは助かりますが、必要な時に買わないとすぐ絶版扱いになります。特に専門分野を扱っている書物は出版部数も少なく、増版は不可能です。古本屋で探しても滅多に手に入りません。このような状況下を考慮すると、日本は出版大国でありながら、書籍を大切にしない傾向があります。たとえ電子書籍化されたとしても、扱うジャンルはたくさん売れそうなものばかりです。本当に必要な本は費用がかかっても、その時に購入しておく必要があります。