#394 素晴らしき挑戦者たち

 8月も間もなく終わりを告げますが、夏の終わりとともに晴天が戻ってきました。残暑というよりも猛暑の続きと表現する方が適切かもしれません。とにかく奇妙な8月でした。高校によってはすでに2学期が始まっていますが、甲子園は雨天続きの試合日程変更で本日が決勝戦となります。
 さて現在パラリンピックが開催されていますが、ここでも多くの日本人アスリートが活躍しています。NHKは前回のパラリンピック放送枠を大幅に拡大して連日朝から晩まで様々な種目を放送しています。パラリンピックは前回(1964年)の東京オリンピックから始まったそうですが、当時あまり報道されず、人々の関心もそれほどなかったようです。それから60年余りが経ち、時代とともに障がい者に対する偏見や誤った認識も変わり、今では普通のアスリートとして世間に受け入れられるようになっています。
 実際様々な種目を観戦していますと、健常者にはできないような種目がたくさんあります。例えば視力障がい者のゴールボールやブラインドサッカーでは、ボールの中に入っている鈴の音を頼りにボールを投げたり、蹴ったりして得点を競い合います。もちろん全員アイシェイド(目隠し)を着用して競技しますが、常人には不可能なスポーツです。他の種目でも障害の程度により競技種目が細かく分類されており、オリンピック競技と違った意味で面白く観戦できます。
 障がい者(以前は障害者と表現していました)という表現ですが、パラリンピックを観戦しながら、「障害」というよりも「個性」という印象が強く、果たして健常者と障がい者の違いは何かと考えざるを得ません。あるパラアスリートは「自分が失った身体の部分を今では当然のこととして受け止めており、無くしたものを嘆くのではなく、残されたものを活用して生きている」旨の発言をなされています。
 世の中も障がい者に対する意識が向上し、様々な面で障がい者に対する施策が行われ、以前に比べると暮らしやすい社会に成りつつありますが、それでも不便な生活を強いられる場面が多々あります。健常者としては普通のことでも様々な障がいを持つ人々にとって住みにくい世の中ですが、建物や道路などのハード面だけでなく障がい者に対するに思いやり等のソフト面も充実させなければなりません。
 障がい者を表現する英語の表現はいくつかあります。a handicapped person や a disabled person などが用いられていますが、文字通り「障害」を意味する否定的な表現なので、最近では a challenged person を用いる傾向があります。この challenged は「挑戦(challenge)」という名詞の形容詞ですが、「人生の課題や難題、障害に挑戦する」という良い意味で最近使われ出しています。つまり、障がい者は「挑戦者」ということになります。最近、「障害者」を「障がい者」で表現するようになりましたが、英語のように思い切って「挑戦者」と表現してはいかがでしょうか。何に対する挑戦者か。自分に与えられた「障がい」という個性に挑み、人生を謳歌する意味での「挑戦者」です。「目くら」などの「差別語」を無くすことには、その言葉に歴史的・伝統的な背景や意味合いがあり、私個人は必ずしも賛成しませんが、新語を創り出すことにより、現代の状況に応じた適切な表現を用いることができます。換言すれば、私たちが用いる言葉を変えることにより、障害者に対する私たちの意識は変わっていきます。その意味で「障がい者」は「素晴らしき挑戦者」なのです。

2021年08月29日