#305 音楽の泉
今日は朝から快晴です。昨日の大雨とは異なり、湿度の低い爽やかな五月晴れとなっています。緊急事態宣言の終了に伴い、全国各地では少しずつ街の賑わいが戻りつつあるようですが、それに伴い新コロの第2波の到来が懸念されています。緊急事態宣言は終了しましたが、新コロが終息したわけではありませんので、やはり個人の行動自粛が一番です。
さて日曜日の朝は時々寝床でラジオを聴くことがあります。朝8時ごろにラジオのスイッチを入れるとNHKの朝のニュースの後で「音楽の泉」が始まります。毎回1作品を特集してクラシック音楽を一般のリスナーに分かりやすく解説し、その曲の構成やモチーフ、作曲家の生い立ちや人生観、作曲の背景にある文化的な営みなど普通のクラシック音楽番組では放送しないような些細にいたる情報を与えてくれます。
30年以上にわたって「音楽の泉」を担当された皆川達夫さんが4月19日に永眠されました。私は「音楽の泉」を20年以上も何となく聞いていましたが、皆川さんの語る作曲家の人物像を聞きながら皆川さんの姿を想像していました。声色から判断すると、ふっくらしたお顔で眼鏡をかけており、髪は少なく、好々爺の姿をイメージしていました。
ところが先日NHKのテレビで皆川さんの特集番組をたまたま拝見しましたが、声からくるイメージとは全く異なり精悍な顔つきの方でした。また彼の経歴を拝見しますと隠れキリスタンとグレゴリオ聖歌の関係を研究するなど、音楽の様々な分野にわたる幅広い知識を屈指してクラシック音楽の普及に努めてこられました。
先日の西日本新聞のコラム「春秋」に皆川さんに関する記事が載っていましたので、ご紹介します。。
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西日本新聞5月14日付「春秋」より
『ラジオ長寿番組の一つにNHK第1の「音楽の泉」がある…』
ラジオ長寿番組の一つにNHK第1の「音楽の泉」がある。1949(昭和24)年に放送開始のクラシック音楽入門番組。日曜の朝、布団の中で聴くとトロトロ気分で二度寝に誘われる
▼シューベルトのピアノ曲「楽興の時」に乗って、今年3月までは「お話は皆川達夫さんです」の案内で始まった。西洋音楽史家皆川さんの柔らかな、それでいて枯れた語り口に長く親しませてもらった
▼3月29日の放送の最後に「体調にやや不安を覚えるようになりました」と番組を降りられた。88年に解説役になって31年余り。クラシックの魅力を分かりやすく楽しく淡々と伝えてきた
▼著書も多い。「洋楽渡来考」という表題も。最初に渡来した西洋音楽はどんなものだったのか。皆川さんの渡来考は、隠れキリシタンが口伝えで継いだ祈りの歌「オラショ」研究に及んだ。オラショとグレゴリオ聖歌との関係を明らかにしてイタリア政府から功労勲章を受けている
▼学術的業績を、隠れキリシタンの里・長崎県平戸市の生月島を何度も訪ねて積み重ねた。西洋からの古楽が形を変えて継承された史実は、研究者の心を熱くした。「長く厳しい弾圧の中、歌い継がれてきたことは奇跡に近い」。そんな言葉が本紙に載ったこともある
▼番組を終えて約3週間後に老衰による訃報を聞いた。92歳。九州の小さな島で掘り起こした音楽の古い泉を、探究心の源泉にした人だった。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/608146/
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音楽は人の心の琴線に触れる文化です。そのジャンルが何であろうと生活に密接した文化です。世の中が平和でなければ音楽の隆盛はありません。新コロの影響でコンサートやライブがすべて自粛されていますが、すべての音楽家にとってこれは悲劇です。新コロで外出し難い今、部屋で好きな音楽を聴いて心を潤いを取り戻しましょう。
長年にわたりクラシック音楽の魅力を伝えた皆川達夫さんのご冥福を心より祈り申し上げます。